ももクロ&アイドル blog (by中西理)

ももいろクローバーZとアイドルを考えるブログ

俺の藤井 2016 in さいたまスーパーアリーナ 〜Tynamite!!〜

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 人気アイドルグループ、ももいろクローバーZ私立恵比寿中学などが所属するスターダストプロモーション(スタダ)によるアイドル・ライブイベント「俺の藤井 2016 in さいたまスーパーアリーナ 〜Tynamite!!〜」が1月8・9日の2日間にわたり埼玉・さいたまスーパーアリーナにて開催された。
 スタダには現在前述の2グループに加えて、名古屋に拠点を置くチームしゃちほこ、大阪のたこやきレインボー、さらに最近新たに相次ぎ発足した数グループも加わり、AKB48乃木坂46グループ、ハロープロジェクトに続き第3勢力となりつつある。「俺の藤井」は年に一度その所属アイドルが一堂に会するお祭り的なイベントである。この形式で開催されるのは今回が3回目。毎回企画を工夫しつつ開催されるが、今年は格闘技イベントの名称をもじった「俺の藤井 2016 in さいたまスーパーアリーナ 〜Tynamite!!〜」*1として開かれた。

 前回紹介したももクロのライブ、ももいろクリスマスが毎年恒例の「PRIDEのテーマ」からスタートするようにももクロプロデューサーの川上アキラ氏やライブ演出を手掛ける佐々木敦規氏らももクロ陣営にはプロレスや格闘技のファンが多い。実はスタダ上層部にはそれ以外にも趣味を同じくする人が多く、ライブ名もそうした大人たちの一種の悪乗りで名付けられた。だが、今回はそれだけにとどまらず2日間のうち1日目は「第1回 ワンデイワールドリーグ戦」と題され、バトル形式の対抗戦となった。スタダ所属の女性アイドルグループ8組(ももいろクローバーZ私立恵比寿中学、チームしゃちほこ、たこやきレインボー、S★スパイシー、3B junior、ときめき▽宣伝部、ばってん少女隊)が参加。1対1で1曲ずつパフォーマンスを行い、観客の拍手、コールの大きさで勝敗を決める。勝ち残ったグループはそのまま次のラウンドへ進み、次の曲を披露。バトルは制限時間いっぱい行われ、最後のラウンドで勝利したグループが「最高王者」として2016年の「スターダストイチ推しアイドル」の座を手に入れる。
少し早めに会場に着くと開場時間はまだなのにすでに色とりどりの色の衣装を身にまとったファンが会場の周囲に集まっていた。すでにグッズの売り場には列ができていたが、いつものももクログッズではなくこの日は特別にたこやきレインボーの列に並び青のマフラータオルを購入した。実はこの日はチケットをたこ虹のファンクラブ枠で手に入れていたため、たこ虹応援モードでライブ観戦しようと決めていたからだ。観客の拍手、コールの大きさで勝敗を決めるとあるが、当然通常通りにチケットを販売すればももクロのファンの数が圧倒的に多いから、その不公平を解消するためにファンクラブ枠でのチケット販売数をそろえるようにしており、そのためももクロのファンクラブ(AE)の抽選倍率は圧倒的に高く、そこでの応募はすべてはずれてしまったからだ。
 見る前は茶番劇も交えたプロレス的なものを予想してライブに臨んだ。だが、これが案外ガチの勝負で歌で争う格闘技イベントとしてスリリングで面白いものであった。こうした企画が面白い見ものとして成立したのはスタダのアイドルグループは全体的なコンセプトデザインの下で1人のプロデューサーが指揮するようなAKB48乃木坂46グループ、ハロープロジェクトとは異なり、いずれのグループもプロデューサー役を兼ねるマネジャーがついていて、それぞれが他のグループとは関係なくそれぞれの方針で運営を行っている。それゆえ、結成された順番からももクロが長女で以下、次女が私立恵比寿中学、3女がチームしゃちほこ、4女がたこやきレインボーというような序列はあるが、おそらくマネジャー同士ではライバル意識も強い。そういう土壌もあってどのグループも本気で勝ちにきているような気概が感じられた。それが結果的に単独のライブでは滅多に見られないような気迫溢れるパフォーマンスを生み出すことになったからだ。
 それでは実際の勝負のそれぞれについて触れていきたい。第1Rは福岡を拠点とする「ばってん少女隊」と東京の「ときめき▽宣伝部」によるフレッシュ対決だ。いずれも最近本格的な活動を始めたばかりの若いグループ同士の対決だが、ちょっとした裏事情を明かすと前座試合的な位置づけと見られがちだが、この両者にもちょっとした因縁、簡単には負けられない事情がそれぞれにありそれが勝負に興趣を加えていた。「ばってん少女隊」は、スタダ福岡営業所から誕生し昨年6月から活動を開始したアイドルユニット。こちらのマネジャーもプロレスファンで、一見あの人を連想させるところだが、プロレスラーの“革命児”棚橋弘至のニックネームにちなみ「100年に1組の逸材」をキャッチコピーとしている。ももクロを筆頭に姉妹関係でいえば5女となる。一方、「ときめき▽宣伝部」の方は同じくスタダ芸能第3部の所属だが、アイドル組ではなく、女優組により結成された。昨年4月にケーブルテレビで放送されている番組『私立輝女学園 SEASON2』を広めるために部活動という位置づけで生まれたグループなのだ。
 芸能第三部のジュニア育成部門以前はアイドル志望の子と女優志望の子が混在していたが、数年前にこのそれぞれの希望に応じた育成を行おうと組織改革を行いこの両者は分離された。「ときめき▽宣伝部」はそのうち女優育成部門の方から生まれたアイドル。この対戦「ばってん少女隊」はアイドルとしての本流意識あっただろうし、「ときめき▽宣伝部」には2カ月ほどとはいえ先にデビューしたという先輩の意識はある。それぞれ負けられないという意識は強かったと思われるのだ。
 対決は結局「ばってん少女。」を歌ったばってん少女隊勝利に終わるが、アイドル志望の子たちを集めて結成したということもあってかこちらは平均年齢13.7歳と若いのに似合わず歌も踊りもかなりしっかりしていて、女優部門ということもあっては歌唱力に現時点では若干の難があった。「ときめき▽宣伝部」に順当といえる勝利をおさめた。
 次に登場したのがももクロのプロデューサーである川上アキラの直轄にある3B junior。こちらは総勢26人の大所帯の強みを生かし迫力溢れるパフォーマンスを展開。持ち歌の中では代表曲で「私たちの音楽」で披露されたこともあり切り札曲「勇気のシルエット」を繰り出して「夢のキャンバス」を歌った ばってん少女隊勝利した。
 ここから3B juniorは「Stardust Fantasia」でこの日登場したなかでは最年長の先輩アイドル「S★スパイシー」にも連勝をして快進撃。「Fragile Stars」で3連勝を狙うが、前山田健一作詞・作曲のキラーチューン「なにわのはにわ」を繰り出してきたたこやきレインボー勝利した。
 勝負の判定は音量の単位である「dB」で表示され観客の拍手、コールの大きさで勝敗を決めた。どんな方法でそれが計測判定されたかは公開されておらずそこにはプロレス的ファンタジーもあるわけだが、現地で見る限りはここまでもさらに波乱を呼ぶ展開もあった後半戦も含め明らかにおかしいと思われるような不可解な判定はなかった。その意味では全体を通してフェアな戦いが展開されたのではないかと思う。
 たこやきレインボーの登場以降が格闘技に例えるメインエベントということになる。「絶唱!なにわで生まれた少女たち」と前山田曲を続けたたこ虹のパフォーマンスは十分に良かった。しかし、たこ虹応援モードで見てさえ、この日のチームしゃちほこには勢いが感じられ強かった。しかも披露したのはライブの中でもっとも盛り上がる勝負曲である「乙女受験戦争」。容赦なくガチに潰しにかかってきた感があった。この2グループはどちらも店長とファンなどには呼ばれている長谷川氏が手掛けたゆえに交流も多く、真の意味での姉妹グループといえるのだがここでいきなり格下のはずのたこ虹に対し、切り札を切ってきた様子にはただごとではない闘志が感じられた。懸命の応援にもかかわらずここでたこ虹は敗れたがある意味いたしかたないというか、納得の敗戦であった。
 その後の対戦では序列通りに初期の代表曲のひとつ「トリプルセブン」で連勝に挑んだチームしゃちほこだが、いきなりやはりライブでもっとも盛り上がる鉄板曲「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX」を名刺代わりに登場した私立恵比寿中学エビ中)が貫録勝ちした。続けてアップテンポのキラーチューン「仮契約のシンデレラ」で王者ももクロに挑戦したエビ中だが、ももクロ側の曲名を聞いた瞬間、会場に思わずどよめきが広がった。ももクロの最初の曲が普段ライブで1曲目に歌うことはまずない代表曲中の代表曲「行くぜっ!怪盗少女」だったからだ。「ここで負けることだけは絶対に許されない」という思いがはっきりと感じられた選曲でこの曲まではまだ終盤での茶番やプロレス的などんでん返しの可能性を考えていた私だったが「こりゃマジだわ」と確信したのだ。
 ここからは王者ももクロの連勝が続く。もっとも相手はばってん少女隊、 3B juniorといずれも新人といえる勝って当然の相手。勝つこと自体に何の不思議もないが、ここでは曲選択で遊ぼうと思えば遊ぶことができるのにそれをせず「労働讃歌」「DNA狂詩曲」と人気曲を普通ではありえない局順の選択で立て続けに繰り出し王者ももクロの王者たる由縁を見せつけた。「一羽のウサギを狩るにもライオンは全力を尽くす」という例えを地でいく戦いぶりで「王者ももクロ」の凄みを後輩グループに見せつける戦いぶりであった。
 たこやきレインボーを相手にももクロは再び別の意味であっと驚く選曲をしてみせた。それまでの勝負の結果からライブとして盛り上がる曲が有利という流れがはっきりと見えてきている中であえて選んでみせたのがバラード曲の「灰とダイヤモンド」だったからだ。少しでも崩れれば相手に票が流れかねない状況だが、この日のパフォーマンスは本当に完成度が高くほぼ完ぺきといっていいほど非のうちどころがなかった。たこ虹の「オーバー・ザ・たこやきレインボー」を全力で声援。こちらも本当に出来はよくて、デビュー曲だっただけに発声の確かさや歌の表現のきめこまやかさなどメンバーそれぞれの成長ぶりには思わず感嘆して、涙がでそうなほどだったが、「灰とダイヤモンド」の前に分が悪いのは致し方がないことだった。
 ももクロが盤石の強さを見せ始め、このまま最後まで突っ走るかと思えたが次の勝負でこの日最大の波乱が起こる。ももクロが歌ったのは「MOON PRIDE」。どのグループも勝つことをガチに考えていた選曲だったのに対しももクロだけはそれだけではなかったのかもしれない。昨春発売した美少女戦士セーラームーンCrystalの主題歌だが、ただ元気がいいというだけでなく、美しいハーモニーを聴かせているのが特徴。歌唱力という意味でももクロの成長ぶりを示した歌だが、その分ライブで盛り上がるというタイプの歌ではない。そこに一瞬のスキがあったかもしれない。
 しかし、そうだとしても「恋人はスナイパー」を持ってその一瞬に見事に切り込んで見事な勝利を収めたチームしゃちほこはこの日一番の輝きをみせていた。しゃちほことしては初期の楽曲で最近は毎回歌う曲というわけでもないが、もともと歌詞からしてこの「恋人はスナイパー」は明らかにももクロの「行くぜっ!怪盗少女」を明らかに意識したところがあって、それは「レーダーに映る 君のハートを 怪盗なんかに とらせやしないよ」などと歌詞の一部に「打倒ももクロ」をはっきりうかがわせる部分がある。
 それに加えてこれもしゃちほこがライブで時折やることだが、その日のTPOに合わせて歌詞の一部を替え歌にして歌う部分でこの日は「怪盗なんかに負けちゃいられない ライフル構えて 一撃必殺」の部分を「ももクロなんかに負けちゃいられない」と完全に標的に向かって闘志満々の気迫を見せ、この後に秋本帆華が見せたアクロバット(連続の側転)もいつもよりも大幅に回数を増やして行うなどパフォーマンスが終わった瞬間の場内の高まりは凄まじいものがあり、モノノフの私も「これはやられた」と思ったほどで、ここでのしゃちほこの勝ちには納得せざるをえないものがあった。
 次もアゲ曲の「そこそこプレミアム」。熱気溢れるハイテンポの楽曲を連発するしゃちほこの凄まじい勢いは最初の勝負では負けたエビ中を迎えても留まるところを知らない。まさに手がつけられない状態であった。エビ中は次の曲でこの日欠席したメンバーの柏木ひなたへの思いを込めて、「スーパーヒーロー」を歌うが、しゃちほこ旋風の怒涛のなかにのみこまれるように敗れてしまう。この負け方はきわめてエビ中らしいといえるかもしれない。勝負に徹してしゃちほこを止めに行くなら熱量が溢れる「大人はわかってくれない」じゃないかとエビ中のファンではない私は思ったのだが、そうじゃないのがこのグループの持ち味なのかもしれない。
 2連勝の勢いを受けてチームしゃちほこが最後に満を持して繰り出してきたのがファンにとってのライブでの鉄板曲「抱きしめてアンセム」。まるであらかじめ書かれたシナリオのように打倒ももクロのためにここまで温存していた曲である。会場の盛り上がりは極限に達したと思われ、モノノフの私でも「これは完全にやられたかも」と脱帽しかけた。
 ところがこの空気がももクロが登場し「ツヨクツヨク」を歌い始めると一変する。「ツヨクツヨク」はmihimaruGTのカバー曲。何で最後の最後にカバー曲を歌うんだという非難の声が一部から出ていたが、決してそうじゃない。この曲はももクロももいろクローバー時代からライブの最後など重要な場面で歌い続けてきた曲で、ただのカバー曲ではなく「ももクロの歴史」をまとった曲なのだ。
 ももクロ陣営がどこまで考えてこの曲を選んだのかは分からないが、現在は各陣営のファンに分かれているとはいえそのうちの熱心な古参のファンにはどの陣営のファンもかなりの数がももクロファンだった時代がある。この歌はそうした記憶を呼び起こす効果を持っている歌であり、そしてももクロのこの曲のパフォーマンスはそうしたかつてのファンに対しても「私たちは今も変わらないから」と訴え記憶を甦らせるような彼女らにしかできないパフォーマンスだった。
 チームしゃちほこが肉薄してみせたのも確かだが、受けてたったももクロもそれでも超えられない壁を見せてみせた。最高の戦いが繰り広げられた1日であった。

俺の藤井 2016 in さいたまスーパーアリーナ 〜Tynamite!!〜「第1回 ワンデイワールドリーグ戦」
2016年1月8日 さいたまスーパーアリーナ セットリスト

第1R

・ばってん少女。 / ばってん少女隊
・季節外れのときめき▽サマー / ときめき▽宣伝部●

第2R

・夢のキャンバス / ばってん少女隊
・勇気のシルエット / 3B junior○

第3R

・Stardust Fantasia / 3B junior○
・SGC★スパイシー / S★スパイシー●

第4R

・Fragile Stars / 3B junior●
・なにわのはにわ / たこやきレインボー

第5R

・絶唱!なにわで生まれた少女たち / たこやきレインボー
・乙女受験戦争 / チームしゃちほこ○

第6R

・トリプルセブン / チームしゃちほこ●
・放課後ゲタ箱ロッケンロールMX / 私立恵比寿中学

第7R

仮契約のシンデレラ / 私立恵比寿中学
行くぜっ!怪盗少女 / ももいろクローバーZ

第8R

労働讃歌 / ももいろクローバーZ
・アツか夏きたばい! / ばってん少女隊

第9R

・DNA狂詩曲 / ももいろクローバーZ
・ひとつよろしくどうぞ / 3B junior●

第10R

灰とダイヤモンド / ももいろクローバーZ
・オーバー・ザ・たこやきレインボー / たこやきレインボー

第11R

MOON PRIDE / ももいろクローバーZ
恋人はスナイパー / チームしゃちほこ○

第12R

・そこそこプレミアム / チームしゃちほこ○
・スーパーヒーロー / 私立恵比寿中学

第13R

・抱きしめてアンセム / チームしゃちほこ●
・ツヨクツヨク / ももいろクローバーZ

エンディング

Chai Maxx

※文中の▽は白抜きハートマークが正式表記です。






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*1:どこかで聞いたような名前だなと思われた方もいるかもしれないのだが、そのせいです