ももクロ&アイドル blog (by中西理)

ももいろクローバーZとアイドルを考えるブログ

2007年演劇ベストアクト

 大晦日恒例の2007年演劇ベストアクト*1 *2 *3 *4を掲載することにしたい。(ダンスパフォーマンス編は後ほど掲載する予定。まずは表のみだが、後ほどコメントも加筆の予定)。さて、皆さんの今年のベストアクトはどうでしたか。今回もコメントなどを書いてもらえると嬉しい。

2007年演劇ベストアクト
1,維新派「nostalgia <彼>と旅する20世紀三部作#1」*5 *6
2,五反田団+演劇計画2007「生きてるものはいないのか」(京都芸術センター)
3,MIKUNI YANAIHARA PROJECT「青ノ鳥」(吉祥寺シアター*7
4,渡辺源四郎商店「小泊の長い夏」(ザ・スズナリ*8
5,クロムモリブデンマトリョーシカ地獄」*9HEP HALL)、「スチュワーデスデス」(in→dependent thaater 2nd)
6,シベリア少女鉄道「永遠かもしれない」(シアターグリーン*10、「俺たちに他意はない」(赤坂RED THEATER)
7,遊劇体「天守物語」(野江・アトリエS-pace)、「夜叉ケ池」(ウイングフィールド)
8,地点「かもめ」(びわ湖ホール)、「桜の園」(アトリエ劇研)
9,ヨーロッパ企画「火星の倉庫」(京都府立文化芸術会館
10,ポかリン記憶舎「humming」(池袋・MODel T)

維新派「nostalgia」の第1位は動かしがたい。「<彼>と旅する20世紀三部作#1」という副題がつけられ三部作の始まりとなった。主題(モチーフ)的にもこのところ「キートン」「ナツノトビラ」と続いた絵画的ビジュアル重視の傾向から物語(ナラティブ)の要素が強まり次の段階(フェーズ)に入った。あくまで個人的な見解ではあるが、日本維新派時代はひとまず置いておくとして、維新派には過去に作品の変遷を重ねながらいくつかの頂点を迎えたが、そのひとつは東京に進出した伝説の「少年街」、そして次が中上健二の小説に材をとった「南風」でこれが祝祭演劇としての維新派の到達点だと思っている。
 しかし、松本雄吉氏がインタビュー*11 にこたえて、「維新派のおいてもう祝祭の時代は終わったという気はしている」と話しているのは注目すべき発言で、この「nostalgia」はある意味「南風」と近しい作風への回帰といえなくもないだけに逆にここで当時の維新派と今の維新派との方向性の違いはもはや野外劇であるとかないとかと関係なく白日のもとにあらわになった。つまり、維新派は頂上の姿がまだ完全には明らかにはなっていないが、すでに別の山に登りつつある。それがこの三部作を通じてどのような果実を生み出すのか。特に次回公演は琵琶湖湖畔での野外劇らしいので、野外での祝祭劇でない維新派に注目したい。
もっとも注目される劇作家・演出家を挙げるとすると五反田団の前田司郎、ニブロール矢内原美邦の2人になりそう。前田は京都芸術センターとの共同製作となった「生きてるものはいないのか」で昨年に引き続きその才気を見せ付けた。アウトサイダーながら90年代にもっともラジカルな方法論的実験を行った山の手事情社の安田雅弘を思わせる矢内原の「演劇」もきわめて刺激的だ。
関西ではこれまで劇作家の存在に比べ演出家の存在が目立たないきらいがあったのだが、2007年は遊劇体(キタムラマサヤ)による泉鏡花天守物語」「夜叉ケ池」の連続上演、地点(三浦基)のチェホフ戯曲連続上演(「ワーニャ伯父さん」「かもめ」「桜の園」)があり、このほか桃園会が東京のナイロン100℃「犬は鎖につなぐべからず 〜岸田國士一幕劇コレクション〜」と相前後して岸田國士作品を上演(「「a tide of classics」」)するなど古典作品に対する演出家の意欲的な挑戦が目立った。