ももクロ&アイドル blog (by中西理)

ももいろクローバーZとアイドルを考えるブログ

カメハウス「マクベス」@大阪芸術創造館

 作:W・シェイクスピア 脚色・演出・振付:亀井伸一郎
 音響:Miya 照明:滝口史郎![彗星マジック] 舞台監督:西野真梨子
 舞台美術アドバイザー:永瀬由二 衣装:米山真理 小道具:海野仁美、
 ナカバシマリナ 映像制作:甲田春樹[劇団ペーさん'S13}
 宣伝美術:GIGI WEB:Tako 制作:松村綾子
 出演:
 米山真理:幕ノ内優子(女ながら最強ヤンキー、後極道組長)
 北山貴靖[劇団ぺーさん's13]:山本剛瑠羅(ゴウリラ 後、幕ノ内優子主夫)

 阿修羅ボーイ:食栖竜太(殺されたヤンキー)、サラ金ヤクザ
 賦句タツロヲ[劇団ぺーさん's13]:全力疾走、サラ金ヤクザ

 井上誠:手之下力(テノシタリキ 優子の相棒)
 繁澤邦明[劇団うんこなまず]:黒川白次
 ナカバシマリナ:辰浪涼雀之子(タツナミスズノコ 後殺し屋)
 宮崎真澄:菜目邪姉世(ナメンジャネエヨ 後占い師)
 にしのあず:渋谷狩咲(シブヤギャルサ)
 海野仁美:桃汲乙女(ピンクレディ)、 殺された組長の娘

 城之内コゴロー[元男肉 du Soleil]:勘榾一鉄(カンコツイッテツ)、組長、刑事

 澤田清美、イトウエリ(劇団そとばこまち)、寺村拓也、大西聖久、辻川倖平[劇団万絵巻] :若衆
 プリン松:劇団制作

 カメハウス*1近畿大学出身者による劇団。近畿大学出身の劇団といえばデス電所、烏丸ストロークロックと一時相次いで出てきたが最近は解散したらしい男肉 du Soleilが劇団ではなくてダンスカンパニーだとすればむしろダンス系の方が目立つ。その意味では後輩劇団として東京に去ったデス電所の跡を埋めるような存在になれるか。今後が注目されるところだ。 
 以前に演劇ショーケース公演であるLINX'S 01*2で短いものを見た時に割と面白く「なかでも掘り出し物といっていいのがカメハウス。演技もダンスも「もうちょっとなんとかならないのか」というレベルで正直下手なのだが、アニメの主題歌的な曲想に乗せて、ほぼ全編が音楽への当てぶりのように進行していく舞台は登場人物の演技やキャラなどすべてがアニメから飛び出してきたようなまさにアニメ・ゲーム的なリアリズムによる作品。今回の劇場が大阪のオタクの聖地「日本橋」にあるin→dependent theatre 2ndであったということもあるがまさに「アキバ・日本橋」的感性がさく裂する舞台でこれはうまくやれば大阪・日本橋発の演劇として売り出せるのではないかと思った」と書き、注目していたのだが、前回公演が行くつもりだったのが東京でほかの公演をみていたために戻ってきた時には開演に間に合わず見られないということもあり、今回やっと見ることができた。
 しかも、今回の演目が「マクベス」だというので「ほぼ全編が音楽への当てぶりのように進行していく」手法でどのようにシェイクスピアを舞台化していくのだろうと楽しみにしていたのだが、ダンス場面は幕間のように途中で何度か挿入されるぐらいで、普通のセリフで物語が展開していくので、残念ながら肩すかしであった。
 「マクベス」とはいっても日本のヤクザの跡目争いの話に設定が翻案されており、米山真理演じる幕ノ内優子がマクベスにあたる。実はエジンバラで以前、「マクベス」をギャングの抗争に見立てた演出での上演(これはテクストは原典のまま)を見たことがあり、
それはすごく面白かったので、このヤクザに置き換えるというのも悪くはないかなと思って見始めたのだが、どうもいけない。主人公を女性に変えた理由がまず分からないのだが、そのためにバランス上からかキャスティングの問題からかほかの人物も何人か女性に置き換えているのだが、どうもしっくりとはこないのである。それに劇団の売りであるダンスシーンが芝居と芝居の間に挿入されるのだが、これがかえって芝居のスピード感を削いでいて、それで上演時間がこんなにも長くなってしまったのではないかと思われた。いくらなんでも上演時間2時間40分。少し長すぎると思った。もっとも、これにはそのせいでこの後で見ようと考えていたダンス公演が開演時間に間に合わなくて見られなくなった私憤もあるにはあるのだが、それは少し置いておいても上演時間が3時間超えることも珍しくない「ハムレット」などとは違って「マクベス」の場合は海外での観劇でもほとんど長くて2時間前後というのが相場で、途中休憩なしでこの時間はやはり長すぎると思う。
 とはいえ、やはり今回の場合、最大の問題は劇画タッチの演技や物語が古く感じることだ。途中、ゲームのバーチャルファイターのような演技(ダンス)で格闘を演じた場面などいくつか期待していたポストゼロ年代に相応しい「アニメ・ゲーム的なリアリズム」を感じる場面もないではなかったけれどもこの「マクベス」ではそれは中心とはなりえなかった。こういう風に上演されて見るともはや私が考えていた全編がゲーム画面のように演じられる「マクベス」というのは妄想でしかなかったようだ。
 ただ、私の場合、ものがシェイクスピアであるとこだわりがどうしてもあるので、必要以上にシビアになってしまうところがあり、この集団についてはシェイクスピアは向いていなかったんだとあきらめて、今度は前回公演の「DANCE MASTARS」のようなもう少しこの集団のスタイルとのマッチングがよい芝居を見てみたいと思った。