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2010年演劇ベストアクト

 年末恒例の2010年演劇ベストアクト*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7を掲載することにしたい。*8。さて、皆さんの今年のベストアクトはどうでしたか。今回もコメントなどを書いてもらえると嬉しい。

2010年演劇ベストアクト
1,ままごと×あいちトリエンナーレ「あゆみ」(精華小劇場)
2,チェルフィッチュホットペッパー。クーラー、そしてお別れの挨拶」(原宿ラフォーレ、京都アートコンプレックス1928)、「私たちは無傷な別人である」(愛知県立芸術文化センター)
3,松本雄吉×松田正隆「イキシマ」(精華小劇場)
4,東京デスロック+渡辺源四郎商店「月と牛の耳」(キラリ☆ふじみ)
5,悪い芝居「らぶドロッドロ人間」(京都アートコンプレックス1928)、「キョム!」(精華小劇場)

6,快快「SHIBAHAMA」東京芸術劇場)、「Y時のはなし」(VACANT)
7,柿喰う客「露出狂」(精華小劇場)
8,七ツ寺プロデュース・天野天街演出「りすん」七ツ寺共同スタジオ
9,マームとジプシー「ハロースクール、バイバイ」(京都アトリエ劇研)
10,トイガーデン「ユビュ王」ウィングフィールド
次点、ロロ「いつだっておかしいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校」(京都アトリエ劇研)
特別賞、くじら企画「密会」ウィングフィールド

 2010年の特徴はままごと(柴幸男)、東京デスロック(多田淳之介)、快快(篠田千明)、柿喰う客(中屋敷法仁)らポストゼロ年代の作家らの本格的な台頭であろう。年頭に「わが星」で岸田戯曲賞を受賞した柴はこの世代のトップランナーに躍り出た。「あゆみ」は2008年にtoi presents 3rd「あゆみ」として初演されて以来、さまざまな形で再演をされてきた柴の代表作だが、今回はあいちトリエンナーレの祝祭ウイーク参加作品として地元のキャストをオーディションで集め上演し、大阪、岐阜と巡演した。「わが星」はセリフをラップ音楽にのせる音楽劇だったが、この「あゆみ」はまた違うスタイル。作品ごとにスタイルが変わるのがこの世代の特徴といえる。「あゆみ」では平田オリザの現代口語演劇風のセリフ回しを基調にしながらも、あゆみという名前の女性の一生を生まれてから死ぬまで、歩きながら演じる。この際に演技の受け渡しをするのがこの作品の仕掛けで、ひとりの人物があゆみを演じるのでがなく、複数の人間が演じることで観客の脳裏のそれぞれに想像力を喚起させ間テキスト的にいわばバーチャルな人物を立ち上がらせていく。
 「あゆみ」のもうひとつの特徴は舞台を歩くということが、生きるということ、そして本来不可視であるはずの時間の流れのメタファー(隠喩)となっていることだ。そして、あゆみの物語としては「初めの一歩」として赤ちゃんのあゆみが両親の前で歩いた場面から、子犬を拾った子供時代、先輩へのあこがれ、彼との出会い、結婚、出産、子供の成長、突然の母の死、娘の結婚……それぞれのエピソードは下手をするとステレオタイプとも思われかねないほど陳腐でもあるのだけれどここではむしろ陳腐ゆえの普遍性が前に述べた間テキスト姓と相まって、観客それぞれの記憶を呼び起こし、その心にさざ波を引き起こす。
ままごと×あいちトリエンナーレ「あゆみ」

 この手法はもちろん平田オリザの関係性の演劇、岡田利規の間テキスト的演劇の延長線上に登場してきたものであるが、それとはまた違う新しい魅力を感じさせるものであった。
 想像力を喚起する演劇としてはチェルフィッチュ岡田利規「私たちは無傷な別人である」で超現代口語を捨て去り、セリフと動きの完全に分離するという新たな方法論に挑戦した。岡田はさらにこれと平行していままでのハイパーリアルな口語文体を主体として一層の進化を試みたホットペッパー。クーラー、そしてお別れの挨拶」も上演。それぞれ海外での上演も行うなど対照的な2作品で健在ぶりを見せつけた。*9
チェルフィッチュホットペッパー。クーラー、そしてお別れの挨拶」

 公立劇場「キラリ☆ふじみ」の芸術監督に就任した多田淳之介(東京デスロック)の活躍ぶりにも目覚ましいものがあった。他のアーティストとの共同制作が多かったのも今年の多田の特徴できたまり(KIKIKIKIKIKI)が振付・パフォーマーで参加した神戸クロスオーバー・ザ・KAVC「no w here」もその実験性と娯楽性が融合された好舞台だったが、ここでは渡辺源四郎商店との合同公演「月と牛の耳」を選んだ。「月の牛の耳」は畑沢聖悟が弘前劇場時代に初演した代表作のひとつでその後はいるかHotelの谷省吾演出による上演*10はあったが、畑沢が自ら劇団(渡辺源四郎商店)を立ち上げた以降は出演人数が多いことなどもあり、上演する機会がないままできていたのを東京デスロックとの合同公演により上演にこぎつけた。多田の演出も空手家一家を取り上げた作品に相応しくプロレスなどを取り入れた遊び心に満ちたもので、伝説の空手家を演じた渡辺源四郎商店の牧野慶一、その娘の夫を演じた東京デスロックの夏目信也らの好演も印象に残る舞台であった。畑沢はこのほか「ヤナギダアキラ最期の日」などの新作や外部劇団への書き下ろしなども精力的にこなしいまや現代演劇界の風雲児的存在になってきているが、高校演劇の指導者でもあり、高校演劇コンクールの決勝大会で上位に入賞した弘前中央高校「あゆみ」は柴幸男の「あゆみ」を畑沢が脚色・演出したものだった。

TJのバラード(月と牛の耳ver.) (多田淳之介のテーマ曲らしい)

 ポストゼロ年代の劇団では2009年に引き続き、快快(「Y時のはなし」「SHIBAHAMA」など)、柿喰う客(「Y時のはなし」(「露出狂」「THE HEAVY USER」など)の充実ぶりも目立った。どれか1本が突出的にいいということがまだないのが、「あゆみ」の後塵を拝した理由だが、もともとどちらも公演回数の多い劇団で以前なら玉石混交という感があったのが、結果的に選ぶことにした「Y時のはなし」「露出狂」以外の作品もベストアクト級の粒ぞろいのものが多かった。関西では悪い芝居が若手劇団のうちで断トツの存在感を見せた。ダンサーきたまりが異色のヒロインを演じた「らぶドロッドロ人間」。劇場に住みついたホームレスの群像を登場させ、複雑な入れ子構造により、現実と虚構のせめぎ合いを描き出した「キョム!」。この2本はまったく異なる作風でありながら、いずれも甲乙つけがたい舞台で荒削りではあるが、伸び盛りの劇団の勢いを感じた。特に「キョム!」は賛否両論を呼びそうだが1月中旬に東京公演(下北沢駅前劇場)を控えており、東京の演劇ファンもぜひ見てほしい公演である。
快快「Y時のはなし」

マームとジプシー、ロロなどさらに若い世代の登場も今年の特徴。なかでも東京を中心に若い世代の支持を集め、次の世代の中心になりそうな予感をうかがわせたのがマームとジプシー「ハロースクール、バイバイ」だった。平田オリザ岡田利規の方法論を前提として、そこから派生したサンプリングリミックス、繰り返しとずれなどの独自の方法論でどんな新たな表現領域を生みだされるのか、豊かな可能性を感じた。関西でのポストゼロ年代超新星として今回あえてトイガーデン「ユビュ王」(安武剛演出)選んだ。
 
マームとジプシー「ハロースクール、バイバイ」

*1:2003年演劇ベストアクトhttp://www.pan-kyoto.com/data/review/49-04.html

*2:2004年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/200412

*3:2005年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20060123

*4:2006年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20061231

*5:2007年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20071231

*6:2008年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20081231

*7:2009年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20091231

*8:ダンスパフォーマンス編はこちらhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20101229

*9:wonderlandレビュー http://www.wonderlands.jp/archives/12658/

*10:http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20061226