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2011年演劇ベストアクト

 年末恒例の2011年演劇ベストアクト*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8を掲載することにしたい。*9。さて、皆さんの今年のベストアクトはどうでしたか。今回もコメントなどを書いてもらえると嬉しい。

2011年演劇ベストアクト
1,マームとジプシー「Kと真夜中のほとりで」こまばアゴラ劇場*10
2,ままごと「わが星」アイホール)、「あゆみ」(森下スタジオ)
3,TAKE IT EASY!「千年女優梅田芸術劇場
4,悪い芝居「駄々の塊」(アートコンプレックス1928)
5,クロムモリブデン「節電ボーダートルネード」(HEPHALL)
6,渡辺源四郎商店「どんとゆけ」ザ・スズナリ)、「あしたはどっちだ」ザ・スズナリ
7,柿喰う客「悩殺ハムレットABCホール
8,岡田利規森山開次「家電のように解りあえない」(あうるすぽっと)
9,SPAC「オイディプス(静岡芸術劇場)
10,バナナ学園純情乙女組「バナ学バトル★★熱血スポ根秋の大運動会!!!!」(元・立誠小学校)
次点、ロロ「夏も」(京都アトリエ劇研)
次点、野の上「臭う女」(京都アトリエ劇研)
次点、快快「SHIBAHAMA」in OSAKA(コーポ北加賀屋
次点、東京デスロック「再/生」(KAIKA)
特別賞、くじら企画「山の声」(independent theater2nd)

 東日本大震災という未曽有の出来事の後、2011年の演劇がどうなるかに注目したが、ポストゼロ年代の劇団の快進撃は続いた。ままごと(柴幸男)、東京デスロック(多田淳之介)、快快(篠田千明)、柿喰う客(中屋敷法仁)らに加えて、バナナ学園純情乙女組(二階堂瞳子)、ロロ(三浦直之)らそれに続く世代も台頭した。なかでもこの世代のスタイルを集大成しかつ洗練させた舞台で今後動きの中心になっていくことを確信させたのがマームとジプシー(藤田貴大)だった。ここではアゴラ劇場で上演された「Kと真夜中のほとりで」を選んだのだが、数多く上演した作品のいずれもが一定以上の完成度の高さを持っているのが、藤田貴大の特徴で、残念ながら評価が高く多くの人がほめている「塩ふる世界。」が劇場(横浜STスポット)まで行ってキャンセル待ちまでしながら直前で「きょうはここまでです」となり、見られなかったのだが、私が見ることができた3つの舞台「コドモもももも、森んなか」「あ、ストレンジャー」「Kと真夜中のほとりで」はそれぞれ少しずつ方向性が違うけれども、いずれも甲乙つけがたい印象的な舞台であり、その総合力の高さに今年一番の勢いを感じて、1位に選んだ。

 ポストゼロ年代の新たな世代では京都で初めてそのライブを目の当たりにしたバナナ学園純情乙女組「バナ学バトル★★熱血スポ根秋の大運動会!!!!」も同時多発的でカオス的に展開されていくオタ芸風パフォーマンスは「いま・ここで」ならではの魅力を感じさせ、マームとジプシーとは対極的ながらも決して引けをとらない衝撃力があった。身体表現と映像を駆使して「オタク的」なイメージが奔流のように飛び込んでくるスタイルのインパクトは大きく、近い将来クールジャパンのキラーコンテンツとして海外を含めブレークするだろうとの確信を抱いた。これを1位に置いても構わないのだけれど、「果たして演劇として評価すべきものなのか」、むしろジャンルで言ったらももいろクローバーZとかのが近いんじゃないかという若干の躊躇とそれでもはずすのにしのびないとのジレンマから苦渋の選択でとりあえずこの順位に置いた。逆に言えば演劇ベストアクトとかではなく、現代アートとしての可能性ならこれがダントツ上位かもしれない。

 ままごと「わが星」「あゆみ」、TAKE IT EASY!「千年女優はいずれも再演だが、壮大なモチーフを身体表現を駆使して展開する舞台は3・11以降の世界像を感じさせた。「わが星」は初演の時には見ることができなかったので、今回初めての観劇となった。「あゆみ」は昨年ベスト1に選んだ作品の再演ではあるが、繰り返しのループ部分が大幅に増えるなど演出・脚本ともに大幅に進化を遂げ、事実上の新作と言ってもよいものに変貌していた。この2本の合わせ技で1位に選ぼうかとも考えたが、昨年すでに選んでいることもあり、次席に置いた。
 TAKE IT EASY!「千年女優はアニメ「千年女優」の舞台化である。藤原千代子という伝説の女優を主人公に平安時代から宇宙まで現在・過去・未来と時空を越えた千代子主演の映画の“入れ子構造”により絢爛たる輪廻転生譚を繰り広げた原作アニメ映画を主人公である千代子のほか主要キャストやサブキャストなど200以上に渡るキャラクターを5人の役者が入れ替わりながら演じる「入れ子キャスティング」という手法で元惑星ピスタチオの末満健一(ピースピット)が演出。2009年1月に初演された舞台の再演で今年の1月にHEPHALLで上演された後、東京、福岡とツアーを回り梅田芸術劇場での最終公演があった。
 このツアーの間に3・11があって、梅芸での上演は震災後となったのだが、この舞台が今年を象徴するように思われたのは「千年女優」において地震が大きなモチーフとなっていることなどいくつかの偶然が重なったためでもある。この物語は地震の場面ではじまり、地震の場面で終わる。それは原作アニメもそうだったので、今回の震災とはまったく関係のないことだが、この舞台の初演の時にすでにある種運命的なものを感じていた。というのはTAKE IT EASY!という劇団は旗揚げのきっかけが高校生たちの手によって阪神大震災直後に被災地・神戸で上演された「voice」という震災劇だったからだ。個人的な感慨にすぎないのだが、私は実はその公演の映像をタイニイアリスで見ている。それは阪神大震災により上演できなくなったある劇団の公演の代わりにそこで上映されたものだったのだが神戸で高校演劇をしていたいくつかの高校の演劇部のメンバーが合同で上演したものだった。
 その時の参加メンバーが中心になって旗揚げしたのがTAKE IT EASY!だったからだ。さらに今回の「千年女優」の再演は昨年急逝したアニメ映画の今敏監督への追悼公演として企画されたものでもあり、ひとりの女性の千年の輪廻転生を描いた物語をここで再び舞台として上演することには鎮魂の意味もあったのだが、東日本大震災後の最終公演はさらにそれにいろんな意味での思いが加わり、俳優たちの気迫を感じる入魂の舞台となった。

 関西勢では悪い芝居の活躍も目立った。こちらも劇団事務所でもある京都の民家を使った「団欒シューハーリー」、一風変わった無言劇「猿に恋」、そして回転機構を使ったユニークな舞台装置が非常に印象的な「駄々の塊」とそれぞれまったくスタイルの異なる異色の舞台を次々に上演。昨年末上演した「キョム」と合わせて、この1年で関西を代表する若手劇団の地位を確固たるものにしたといえよう。
 なかでも「駄々の塊」は次々と物語が展開していくうえで、広げていった風呂敷をなにも拾わないまま舞台が終了してしまうなど、従来の演劇観からすれば明らかに失敗作というか、破綻した内容なのにそれでも面白いし、さらに言えばこういう形式が従来の舞台のような首尾一貫した構成よりもよりビビッドに「いま・ここで」をとらえているのではないかと思わせた不思議な作品であった。
 マームとジプシーやままごと、東京デスロックなど洗練された方法論を展開する首都圏の劇団とは対照的な作風ながら、それでいて、ポストゼロ年代劇団の特色である1作品ごとにスタイルが変貌し特定のスタイルを持たないなど両者に通底した共通項のようなものもあり、悪い芝居に対してはその本質がどこにあるのかがいまだとらえかねているところがあるのだが、そのなにが出てくるかうかがいしれないような部分が魅力でもあり、いずれにせよ関西の注目株であることは間違いない。

 3・11がもしなかったら渡辺源四郎商店の2本立て公演「どんとゆけ」、「あしたはどっちだ」(いずれもザ・スズナリ)はもっと大々的な注目を集めて今年のベスト1の最有力候補だったかもしれない。それというのはこれは死刑制度という大きな問題に正面から取り組むために被害者家族が死刑囚を自ら処刑するという「死刑員制度」という架空の制度が導入された世界を舞台にした異色作であるとともにテレビドラマ化もされた「モリのアサガオ」でも知られる漫画家・郷田マモラとのコラボレーションにより、畑澤原案の物語を舞台と漫画をほぼ同時期に発表して競作するという話題性にもこと欠かない舞台でもあったからだ。
 舞台自体もきわめてクオリティーの高いものであったが、5月7日というまだ震災の余韻もなまなましいころの上演だったこともあり、話題もいまひとつ盛り上がりを欠き、優れた舞台ではあったが、今年の気分としてはどうもこの舞台を年間ベストアクトの最上位に位置付ける気分にはならなかった。
 震災が公演を直撃という意味ではクロムモリブデン「裸の女を持つ男」は4月の公演でありながら、主要なモチーフがのりピー押尾学の事件という当時の雰囲気から言えばまったく場違いなものだっただけに東京の公演会場であるシアタートラムはもうかなりビミョーな空気が冒頭から流れて、非常に気まずいものとなってしまっていた。実はこの作品、後から映像で見返してみたらよくできていて悪くなかったのだが……。だが、転んでもタダじゃおきないのがこの劇団の凄さでまさに不謹慎きわまるタッチで3・11とその後起こった出来事を笑い飛ばした怪作が「節電ボーダートルネード」なのであった。これはこの集団がこのところ追求してきた演劇と身体表現パフォーマンスの融合のひとつの完成形を見せてくれたということでもあり、女優陣の好演もありひさびさに青木秀樹ここにありを見せつけた作品でもあった。
 ともに震災そのものを描いた作品ではもちろんないが、人間の通じ合わなさを描いて、震災後に各所で起こったディスコミュニケーション、人間はいかに解りあえないかということを象徴する舞台として、岡田利規森山開次「家電のように解りあえない」と小野寺修二演出のSPAC「オイディプス(静岡芸術劇場)はきわめて興味深いものであった。柿喰う客の中屋敷法仁の活躍ぶりも特筆すべきもので柴幸男が演出したうりんこ「アセリ教育」もなかなか面白かったのだが、女優だけのシェイクスピアとしてシリーズ化しそう女体シェイクスピアの第1弾でもある「悩殺ハムレットは新感覚の「ハムレット」上演として注目すべき舞台成果であった。 

*1:2010年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20101231

*2:2003年演劇ベストアクトhttp://www.pan-kyoto.com/data/review/49-04.html

*3:2004年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/200412

*4:2005年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20060123

*5:2006年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20061231

*6:2007年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20071231

*7:2008年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20081231

*8:2009年演劇ベストアクトhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20091231

*9:ダンスパフォーマンス編はこちらhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20101229

*10:マームとジプシー「Kと真夜中のほとりで」http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20111024