ももクロ&アイドル blog (by中西理)

ももいろクローバーZとアイドルを考えるブログ

SPAC「真夏の夜の夢」@静岡芸術劇場

演出:宮城聰
作:ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳『夏の夜の夢』より
潤色:野田秀樹
音楽:棚川寛子
出演:
赤松直美、池田真紀子、石井萠水、泉陽二、いとうめぐみ、大高浩一、
春日井一平、加藤幸夫、木内琴子、貴島豪、小長谷勝彦、桜内結う、
佐藤ゆず、鈴木真理子、大道無門優也、たきいみき、本多麻紀、牧山祐大、
森山冬子、柳田幸則、山下ともち、吉見亮、若宮羊市、渡辺敬彦
スタッフ
照明デザイン:岩品武顕 [(公財)埼玉県芸術文化振興財団] 
舞台美術デザイン:深沢襟 
衣裳デザイン:駒井友美子 
ヘアメイク:梶田キョウコ 
舞台監督:内野彰子 
演出補:中野真希
舞台:市川一弥、佐藤聖、永野雅仁
照明操作:松村彩香、小早川洋也
音響:加藤久直、大塚翔太
衣裳:畑ジェニファー友紀、丹呉真樹子
装置制作:佐藤洋
制作:米山淳一、平田大 
広報アドバイザー:阿南一徳 
宣伝美術:榊原幸弘 (サイズ)


協力:NODA・MAP
助成:財団法人地域創造
後援:静岡市
平成25年度 文化庁 大学を活用した文化芸術推進事業
(2月1日、2月9日の公演のみ)
作品について
その恋、気のせい!?いいえ、木の精のしわざかも…
妖精、悪魔、人間の繰り広げる「祝祭音楽劇」!
富士山麓の「知られざる森」の中、紙に書かれた文字が踊り出て人の形に。影法師が発した言霊は人を動かす言葉となり、木霊となって木々を揺らす。その文字を書いたのは誰?日本を代表する演劇人のひとり・野田秀樹が、シェイクスピアを下敷きに、原作にはない悪魔メフィストフェレスを忍び込ませ、得意の言葉遊びで観客を夢と悪夢のはざまへ誘い込む。野田の綾なす台詞の美しさ、それはまさに「詩」。人間の想像力を刺激してやまない言葉遊びは、俳優の躍動感あふれる生演奏と一体となり、やがて壮大な世界を創り出す!

 野田秀樹シェイクスピア真夏の夜の夢」を潤色し、日生劇場で上演した「野田版 真夏の夜の夢」を野田の高校・大学での後輩だったSPACの宮城聰が演出した。2011年6月に初演し評判となった舞台*1の再演である。
 この「野田版 真夏の夜の夢」は一応、野田秀樹による初演時の時のクレジットがそうだったせいか、今回も「作:ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳『夏の夜の夢』より、潤色:野田秀樹」とされているのだが、役名、設定などを含めかなり大幅な改作が野田の手によりなされていて、特に物語の後半部分にはゲーテの「ファウスト」などに登場するメフィストフェレスという悪魔という原作にはないキャラクターを登場させるなど、原作の筋立てを借りながらもほぼ野田秀樹作品と考えた方がいいような作品となっている。
 ちなみに原作のあらすじは次の通り。

 昔々のアテネのお話。ハーミアはライサンダーという青年と恋仲であったが、父親はデメトリアスという別の青年と娘を結婚させようとしていた。ハーミアはデメトリアスとの結婚を拒否し、怒った父親は、親の命令に従わない娘をアテネの古い法律によって処刑してくれと大公シーシアスに申し出た。
 難を逃れライサンダーと一緒になるため、ハーミアはライサンダーと申し合わせ、駆け落ちしようと夜に郊外の森へ 入って行った。その計画を親友のヘレナにだけは打ち明けたのだが、デメトリアスを恋するヘレナは駆け落ち話をデメトリアスにもらしてしまった。デメトリアスは駆け落ちを阻止しょうと二人を追いかけて森へ入った。そのデメトリアスの後をヘレナも追いかけて行った。
 ちょうどその頃、森の中では妖精の王オベロンとその妃で妖精女王であるタイターニアが仲違いをしており、タイターニアの態度に腹をたてたオベロンが浮気草を使ってタイターニアをこらしめようとしていた。浮気草はその汁を眠っている目に塗られると、目覚めた時に最初に目に入った者に恋をしてしまうという不思議な媚薬。
 ちょうど森を通りかかったアテネの職人がオベロンの腹心のいたずら妖精パックにロバの頭を被せられて化け物にされてしまい、浮気草の汁を塗られた後目覚めたタイターニアの目にそのロバの化け物が最初に飛び込んで来た。そして妖精女王がロバの化け物に恋焦がれるという目もあてられない光景が出現した。
 反抗的な妃にはとんでもないいたずらをしたオベロンであるが、ひたむきに追いかけるヘレナがデメトリアスに冷たくされるのを見て可哀想になり、デメトリアスの目に浮気草の汁を塗ってヘレナに惚れさせるようにパックに命じた。しかしパックはデメトリアスライサンダーを間違えて、ライサンダーの目に浮気草の汁を塗ってしまい、その後またデメトリアスの目にも汁を塗ったものだから、ライサンダーとデメトリアスが二人してヘレナに恋焦がれて追いかけるの図となってしまった。からかわれていると思ったヘレナは怒って逃げ出し、恋人を奪われたハーミアが怒り狂ってヘレナに殴りかかり、男二人は決闘をする、という大混乱になってしまった。
 その事態に気がついたオベロンは目の迷いを解く薬をライサンダーに塗ってやり、パックに命じてうまく二組の恋人同士ができあがるように取り計らわせた。そして混乱の中で眠りについた四人はやがて爽やかな目覚めを迎え、ハーミアとライサンダーは元のさやに収まり、デメトリアスとヘレナも愛し合うようになった。
 二組の恋人たちの幸せそうな様子を見た大公シーシアスはハーミアの父親の申し出を却下し、二組の恋人たちは幸せな結婚式を挙げた。オベロンはまたタイターニアの迷いも解いてやり、二人は仲良く妖精たちを従えて結婚する者たちが幸せな家族を築くように、と祝福した。

 対して野田版のあらすじが以下の通りだ。

<あらすじ>
創業130年の割烹料理屋「ハナキン」の娘「ときたまご」(池田真紀子)には、板前デミ(大道無門優也)という許婚が…。でも彼女が愛するのは別の板前ライ(泉陽二)。ときたまごとライは富士の麓の「知られざる森」へ駆け落ち。それをデミと、デミに恋する娘そぼろ(本多麻紀)が追う。森では妖精の王オーベロン(貴島豪)と妃タイテーニア(たきいみき)が夫婦喧嘩中。オーベロンは媚薬で妃にいたずらしようと企て、妖精パック(牧山祐大)に命令する。ついでにそぼろに冷たいデミにも媚薬を使おうと思いつくが…。ここまではシェイクスピアの有名なお話。そこに悪魔メフィストフェレス(渡辺敬彦)が登場。なんと、パックの役目を盗みとり、森を大混乱に陥れる。さらには結婚式の余興稽古にやって来たハナキン出入り業者らが加わって…。

 比較してみれば分かるが、原作のアーデンの森を富士山麓の「知られざる森」に、アテネの貴族の子弟である恋人たちら4人は割烹料理屋の関係者に置き換えられ、ハーミアは割烹料理屋「ハナキン」の娘「ときたまご」、デミトリアスとライサンダーはともに板前であるデミとライ、デミトリウスに恋するヘレナは「そぼろ」と役名を変更している。