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地点「かもめ」@吉祥寺シアター

邂逅、チェーホフ、四大戯曲。

京都を拠点に活動する地点がレパートリー2作を一挙上演。東京では初のお披露目となる『かもめ』の決定版と初期三浦演出の粋が残された『桜の園』のチェーホフシリーズ、8年ぶりの東京公演。
作:アントン・チェーホフ 
翻訳:神西清
演出:三浦基
[出演]  安部聡子 石田大 小河原康二 窪田史恵 河野早紀 小林洋平
[美術] 杉山 至 [照明] 藤原康弘 [音響] 堂岡俊弘 [衣裳] 堂本教子
[舞台監督] 大鹿展明 [宣伝美術] 松本久木 [制作] 田嶋結菜

主催:合同会社地点
共催:公益財団法人 武蔵野文化事業団

 地点によるチェーホフ「かもめ」の舞台はこれまで何回も観劇している。もっとも印象的だったのは舞台上に仮設の観客席を設営し、客席側を湖に見立て、そこに張りだしている桟橋を配し、その下に無数の椅子を転がらせたびわ湖ホール版(2007年)、建物の中のアーチ型の内装を活用した京都・アートコンプレックス1928版(2011年)とこれまで2度は観劇してきた*1 *2。今回の上演はそのいずれとも違う演出で縦長の机を使ったのはアートコンプレックスと同じだが、机には金属の板が張られていて、その上でトレープレフを演じる小林洋平がタップダンスのステップを踏むステージにもなっていた。
 地点のチェーホフはかつて大阪市立芸術創造館で見た「三人姉妹」がそうであったように戯曲テキストが断片としてのみ存在しており、元の話を知らないと物語の筋立てをたどれない時もあったが、今回の「かもめ」はシーンやセリフのカットや入れ換えなどはあってもほぼ原作通りの進行。
 「かもめ」の面白さはよほど極端なことをしない限りは原作通りにしかならない「三人姉妹」などとは異なり、重点の置き方による多様な解釈が可能になることだ。大別してニーナとトレープレフに重きを置く演出とアルカージナとトリゴーリンに置く演出があるが、地点の「かもめ」は前者。しかもこれはほとんど小林洋平の演じるトレープレフのひとり語り(モノローグ)のように感じられる。これは例えば同じく前者に重点を置きながらもあくまでニーナ中心に物語を「女優の劇」として描いたケラリーノ・サンドロヴィッチ演出版*3シスカンパニー)とは対照的であり、演出の三浦基が自分を前衛の徒であるトレープレフと重ね合わせているかどうかは分からないが、冒頭の「さあ、ここが僕の劇場だ」とのトレープレフの叫びからスタートする創作を行うものの喜びと苦悩の物語としてこれを読み解いたのは確かなようだ。
 

*1:「無数の椅子を転がらせた」アートコンプレックス1928版と最初書き始めたが今回のパンフの写真を眺めてみるとどうもそれはその時のものではないようだ。ただ、倒れた椅子の間をぬいながら進んでいく、トレープレフの姿だけははっきりと記憶に残っている。あれはどこだったのか

*2:倒れた無数の椅子はびわ湖ホールの時だったようだ。 http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20111015/p1

*3:シスカンパニー「かもめ」 http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20130928/p1