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ももクロ有安杏果、ソロアルバム「ココロノオト」を聴いてみた

 ももクロ有安杏果、ソロ初アルバム『ココロノオト』を聴いてみた

 有安杏果の待望のソロアルバムがついに発売された。図抜けたトータルでの完成度の高さに舌をまいたが、それでいてどこを切っても有安杏果というのはこのアルバムがセルフプロデュースだからであろう。

   しかも武部聡志本間昭光ら日本を代表するベテランアレンジャーを含めアルバム全体をプロデュースしたとしてもおかしくないキャリアのアレンジャー・プロデューサーらを曲ごとに入れ替えて制作していることだ。 それでいてばらついた印象にならないのはその全体を文字通りに杏果自身が統率していて一緒に作品作りをする相手に対していっさい妥協なく自分の美意識に基づいて練り込んでいることだ。

 そして「ココロノオト」のもうひとつの特徴はこのは曲順が曲が出来た順番に並んでいることである。

 実はももクロ主演映画「幕が上がる」に感じた共通項があり、それはいずれも「順撮り(録り)」だということだ。そしてそうしたことで出来上がった作品は期せずして彼女(たち)の成長の記録ともなっている。そして、結果はアイドルだと先入観を持って見始めた(聞き始めた)人をクオリティの高さで驚かせる。

 映画「幕が上がる」の成功は有安杏果に重要な経験も与えたと思っている。それは夏菜子と一緒に収録した駅のホームでの場面。メイキングを見るとよく分かるのだが、この場面で撮影したカットのうちどれを最終的に使うということについて杏果と夏菜子は本広克行監督に撮影終了後監督の判断に対し異論を唱えて強くつめよっている。この場面は結局、監督が2人の意見を考慮しながら再考しカットのつなぎを駆使してこの映画屈指の名場面となった。こういう場面で経験の浅い俳優が監督が出した結論に異論を唱えられるものなのかということに一般論としては疑問を感じなくもないのだが、杏果も夏菜子もそこで妥協を許さず努力すればそれだけ作品はよくなるということを実体験として学んだ。

 「ペダル」でアレンジャーとしては日本駆使の大御所のひとりである本間昭光に杏果が出来上がってきたアレンジに何度も注文を付けて作り直させたという話を聞いたときにいかにも杏果らしいと思った半面、「それは普通許されるのだろうか」と考えたのだが、これも映画の時の経験が生きているのかもしれない。

 一層この子容赦ないわと思ったのは1.0で「ペダル」のアコースティックギターの生演奏で披露するために本間アレンジを完全にアレンジし直してしまったこと。「ペダル」は横アリの時のミニアルバムにも収録されておらず、原アレンジを聴く機会は限られてしまっていたので、今回のソロアルバムで音源が初披露されたことは個人的には喉にささった骨がやっと取れた感もあるのだ。

 アルバムは順録りとは書いたが大きく分けると3つのブロックに分けられるかもしれない。最初の ブロックは自らの作詞曲を武部聡志本間昭光ら大御所クラスから始まり、

脂の乗り切った三十代半ばの久保孝一、宮崎誠らにアレンジを依頼した曲が並び、特に久保孝一にはギター演奏とギターでの曲作りも師事し作曲のノウハウを学んだ。

 ここのブロックでは「ハムスター」と「ペダル」がいい。特に「ハムスター」は実際には一番最初に作りだした曲ともいうが、自らをハムスターに準えるユーモアと自虐の絶妙なバランスがいかにも杏果らしいと思うし、自らの心情を曲にしたとはいえ、専門の作曲家のアドバイスもあったためかアルバム後半の極私的なイメージを綴った「色えんぴつ」「ヒカリの声」と比べるとキャッチーで聞きやすくもある。この曲もvol.0で披露されて以降、音源化されることもなく幻の名曲的な存在になっていたから、ここでアルバムに収録されたのは嬉しいことだった。杏果のソロ曲はももクロの楽曲とは全体としては雰囲気が違う曲が多いのだが、その中ではこの「ハムスター」はもし仮に5人に歌割りされてももクロのアルバムに収録されていたとしても比較的違和感がなかったのではないかと思う。というのはももクロの曲は彼女らが所属するスターダストプロモーション、そしてかつて所属していたキングレコードスターチャイルドレーベルにちなんで、星や宇宙についてのイメージがちりばめられていることが多いのだが、

街頭の灯りが明るい都会の空 星ひとつ見えない無色の空 だけどそこにひっそりと
月が佇むように 確かな光 
放ち続けてたい

 という冒頭の歌詞ひとつとっても「月」や「星」に自らをなぞらえていることがあってこれは例えばそれがももクロのことであれば夏菜子の「太陽」に対し、自分を「星」や「月」に位置づけているようにも思えるし、あるいはこの世界の輝く存在に対して自分たち(ももクロ)のことをそう感じているようにも解釈できるような要素も含んでいるからだ。

 一方、中盤の「Drive Drive」以降は杏果が個人的に大好きで楽曲をよく聴いているアーティストからの提供曲が並ぶ。ここでも選択のセンスに感心させられたが、よかったと思うのはいずれのアーティストへの依頼もレコード会社のプロデューサーである宮本淳之介を通じて行っていることだ。実はこの辺りの曲を聴いて思ったのは以前にも書いたことがあるが有安杏果ソロの楽曲はももクロの未来図だということだ。

ももクロの楽曲はつんく秋元康ら特定の作家がプロデュースするのではない、作家陣の多様性にあることは確かだ。とはいえ、方向性がまったくないわけではなくて、テイストというのはあってそれを司っているのが、音楽プロデューサーの宮本なのだ。ところが、杏果ソロ楽曲の特徴というのは通常のももクロ楽曲ならば宮本が絶対に楽曲製作を依頼しないであろうようなアーティストの楽曲も含まれている。

 「愛されたくて」「遠吠え」の風味堂渡和久)、「裸」の小谷美沙子といった人たちがそうなのだが、宮本を通じて楽曲依頼をしたことでパイプを増やしたのは将来的に大きいような気がする。もちろん、今回制作された楽曲もよい。「愛されたくて」「裸」はいずれもそれまでの杏果になかった新たな魅力を引き出してくれたという意味で注目していたが、特に「愛されたくて」は小沢健二を彷彿とさせるような小洒落た雰囲気を醸し出し「杏果はこういう歌も歌えるんだ」と感銘を受けた。

  最後の2曲はこのアルバム制作時点における杏果の到達点を示している。ネガティブでダークな部分も含む内面までを吐露した「色えんぴつ」と「ありがとうのプレゼント」に匹敵する杏果の新たなアンセムともいえそうな「ヒカリの声」。両極端ともいえる2曲ではあるが、共通点はどちらも「THE杏果」を思わせる曲である。

 最初に「彼女の成長の記録」とこのアルバムのことを評したが、最初の頃の「心の旋律」「Catch up」「ハムスター」「ペダル」「 feel a heartbeat」といった楽曲群がつれづれの思いを書きとめた日記帳のように本当に個人的な心情をそのまま歌ったものであったのに対し、同じ個人の心情を歌ったといっても比喩として自らを使われないままでケースに入れられた色えんぴつに準えた「色えんぴつ」、ネガティブな心象風景から抜け出して「光あれ」と歌い上げた「ヒカリの声」と曲を聞く側がより心情に同調しやすい普遍性を獲得したものになってきている。

 そして、一見もっとも個人的な思いを吐露した歌に見える「色えんぴつ」だが、この歌は杏果のソロ曲の中では珍しく「色」について歌っていて、とは言え「緑」という言葉は歌詞の中には一度も出てこない。それでも歌詞のなかにどこかももクロの歌と重なるところがある。特に聞いていて何度も思い浮かべたのは「モノクロデッサン」である。

 それぞれのメンバーにメンバーカラーがあるというのはももクロのメンバーにとっての宿命のようなものであって、その中で杏果は緑色を担当している。これはファンなら誰でも知っている事実だが、有安杏果のソロの表現する世界観の中では「ももクロの緑」というのは一切出てこない。それは「色えんぴつ」でも同じだが、この曲は前に挙げた「モノクロデッサン」と同様「色」は重要なモチーフとなっている。

 ならばここではどのように描かれているのか。

色えんぴつ - 有安杏果 - 歌詞&動画視聴 : 歌ネット動画プラス

 

 

ココロノオト【初回限定盤A】

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ココロノオト【初回限定盤B】

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有安杏果
1st ALBUM「ココロノオト」
2017年10月11日(水)発売!!

【初回限定盤A(CD+Blu-ray)】
品番:KICS-93535
価格:,704+税

[CD]
1. 心の旋律
2. Catch up
3. ハムスター
4. ペダル
5. feel a heartbeat
6. Another story
7. Drive Drive
8. 裸
9. 愛されたくて
10. 遠吠え
11. 小さな勇気
12. TRAVEL FANTASISTA
13. 色えんぴつ
14. ヒカリの声

[Blu-ray]
<Music Video>
「ヒカリの声」
「色えんぴつ」
「Catch up」

特典映像
「ヒカリの声」Music Video メイキング映像