ももクロ&アイドル blog (by中西理)

ももいろクローバーZとアイドルを考えるブログ

氣志團万博2019~房総ロックンロール最高びんびん物語~@千葉県・袖ケ浦海浜公園2日目

** 氣志團万博2019~房総ロックンロール最高びんびん物語~@千葉県・袖ケ浦海浜公園2日目
<figure class="figure-image figure-image-fotolife" title="氣志團万博タイムテーブル">f:id:simokitazawa:20190910013135j:plain<figcaption>氣志團万博タイムテーブル</figcaption></figure>
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2019年9月15日(日)千葉県 袖ケ浦海浜公園
<出演者>
YASSAI STAGE

10:15 マキタスポーツ
10:30 ゴールデンボンバー
11:50 ももいろクローバーZ
13:10 10-FEET
14:30 ACE OF SPADES
15:50 マキシマム ザ ホルモン
17:10 田原俊彦
18:30 新しい地図 (草彅剛・香取慎吾稲垣吾郎)
19:55 氣志團

MOSSAI STAGE

09:30 DJ ダイノジ
11:15 打首獄門同好会
12:35 C&K
13:55 私立恵比寿中学
15:15 t-Ace
16:35 大島渚
17:55 SUPER BEAVER
19:15 ヤバイTシャツ屋さん
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 台風被害で千葉県各地でいまだ一部停電が続くなどの危機的状況のなかで今年の氣志團万博は開催された。氣志團万博には大(YASSAI STAGE)、小(MOSSAI STAGE)2つのステージがあるが、混雑の中で両ステージを移動するには少し時間がかかるので、今年は私立恵比寿中学エビ中)以外はYASSAI STAGEの演目を見ることになり、エビ中と時間的に重なっていた10-FEETを除くすべての演目を見ることができた。
 もちろん、今年も最大の目的はももクロのライブを見ることではあったが、今年はそれ以外にも見るべきものが多かった。とはいえ、まずはももクロのパフォーマンスの感想から。
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リハーサル

ザ・ゴールデン・ヒストリー
本編

Nightmare Before Catharsis
あんた飛ばしすぎ!!
ココ☆ナツ
鋼の意志
ツヨクツヨク
行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-
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 今年の最大の特徴は氣志團万博にも初めてダウンタウンももクロバンド(DMB)を帯同したことだ。3回にわたるロッキン、JAPAN JAMなどへの参加でフェス参加への方程式を確立してきている。そのうちのひとつが通常のバンドでは本番に向けての音響チェックに終始するリハーサル時間で、各楽器の奏者がまるでそれぞれ歌舞伎役者が名乗りを上げるかのようにチェックも兼ねて、それぞれの演奏を披露。その後、ももクロメンバーが舞台裏でひとりづつマイク、発声そしてマイクからイヤモニへの返りなどをチェック。そのまま4人合わせての歌唱が始まるとバンドも即座にそれに呼応。この日は「ザ・ゴールデンストーリー」の演奏がスタートした。ロッキンといいJAPAN JAMといいこれだけで毎回楽しませてもらっているがパフォーマンスの持ち時間が限られる中でぎりぎりまで楽しませようというサービス精神がももクロだと思うのである*1
 そして、この日はとりあえず「ももクロ万博」恒例の国歌斉唱はあったものの本編に入るや夏ライブ、ももクロMANIA以来の「Nightmare Before Catharsis」から「あんた飛ばしすぎ!!」とロック調の激しい盛り上げ曲連発。そして、ココナツサークルがモノノフだけならず他のバンドのファンたちにもすっかりおなじみになっている夏ライブ定番曲「ココ☆ナツ」とつなぎ、これぞももクロだというのを見せつけた。
 とはいえ、この日の本当の見せ場はこの後にあった。ももクロの特色のひとつは楽曲それぞれのメッセージ性の強さである。実はこのライブではこの後、曲を中断して氣志團が登場してのももクロ氣志團への「これまで呼んでくれてありがとうございます」の感謝状贈呈のセレモニーがあり、それに対して今度は氣志團ももクロに向けて感謝状と第二ボタンで作ったメダルを渡すというサプライズ的演出があった。ここまではこの両者の関係にほっこりするといえばほっこりするが茶番めいた感じでもあり、ここから続いて「この歌を氣志團さんに捧げます」と前振りして歌いだす。
 そして、氣志團の歌を何か歌うのかなと予想したところで歌いだしたのが「鋼の意志」だった。国立競技場ライブの時にアルフィー高見沢俊彦が提供した曲だが、実は一時期ライブの定番曲として歌いすぎた時期があったためファンの一部から「また鋼かよ」などの文句が出ていたせいか、その後はあまり歌われなくなっていた楽曲でもあった。
 そのため、茶番的な空気感を背負ってこの曲に入ったこともあり、「氣志團に捧げるといったのにアルフィーかよ」みたいな落ちかな一瞬は思ったのも確かだった。それだけに会場のモニターに映される鋼の歌詞とももクロの歌を聴いているうちに「これはそんなものではない」ということが次第に分かってきた。
<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/Ggog7tCO9SQ"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=Ggog7tCO9SQ">【カラオケ】鋼の意志/ももいろクローバーZ</a>
 ももクロはMCなどでそのことに触れることはいっさいなかったが、これは明らかに彼女たちのそしてももクロ陣営の氣志團氣志團万博、そしていまも停電の危機的状況にある千葉県の被災者に対するエールだ。このことに気がついた時、涙が止まらなくなった。
 疑問を感じる人は動画サイトへのリンクから歌詞を参照してみてほしい。そして、この瞬間この「鋼の意志」は被災地応援ソングとして新たな命を吹き込まれた。そして、ももクロは「ツヨクツヨク」を歌う。これももともとはカバー曲だが東日本大震災の傷跡が生々しく残る2011年に幾度となく歌った歌*2で、彼女たちにとっては被災で沈んだ人々への応援歌的な意味合いが強い思い入れの強い曲なのだ。
 氣志團万博の今回の開催には賛否両論の声があったのも確かだ。ももクロにも批判は起こるかもしれない。ももクロは来年春の大規模野外ライブを福島県Jヴィレッジで開催するのだが、今回の氣志團万博参加も福島でのライブもももクロにとっては必然である。それがいつどんな時であっても「笑顔を失った人に笑顔を届けにいく」。これこそがももクロレーゾンデートル(存在理由)だからだ。
 そして、実は今回の氣志團万博のもうひとつの大きなテーマは「アイドル」ということではなかったのか。新しい地図 (草彅剛・香取慎吾稲垣吾郎)のライブを見ながらそう思った。
 私はSMAPの熱心なファンといういうわけではないけれど、ももクロがこういう存在にいつかなりたいとかなり以前からSMAP、嵐、ドリフターズのことを挙げていたこともあってももクロファンになってからは特に気にして見るようになっていた。それだけにSMAPの解散はショックであった
*3
し、解散後に今回の3人が行った動画配信のライブ*4はリアルタイムで見ていた。実は以前に取材の仕事をしていたので、まだ無名時代のSMAPのメンバーを記者会見で目にしたことはあるし、メンバーが出演していた演劇公演も幾度となく見ているが、ライブを生で見たことはこれまでなかった。

それで今回初めてライブを見たわけだが、一番凄いと思ったのはSMAP時代のヒット曲はもちろん歌えないから、ほとんどの曲が初めて聞く曲なのだが、それでも「あーSMAPだ」と思わせる力が3人にあることだった。
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セットリスト

#SINGING
72かのナニかの何?
MC with 氣志團
歩いて帰ろう (斉藤和義cover / 草薙剛 アコースティックギター with 氣志團)
MC
星のファンファーレ
72
MC
雨あがりのステップ
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 これが全員が歌唱するアイドルグループがバンドと違って面白いところで、SMAPのメインボーカルは確かに木村拓哉だったと記憶するのだが、3人になってもアンサンブルがある限り、SMAPらしさは薄まっていない。これは杏果が抜けてもももクロももクロであるのと同じかもしれない。
 披露した曲の中には聴くだけでいい曲と思わせるものもあった。SMAP時代に出していたら相当にヒットしてたんじゃないかと思わせるような曲もあるのだが、レコード会社との契約もしていないこともあり、ファン以外の世間には知られていないのがもどかしくもある。そういう意味で現在はそういう客観的な状況もあってSMAP時代と比べると音楽の占めるプライオリティーがどうしても低くならざるをえない3人にとってもファンにとっても今回のフェス参加は大きな意味があったのではないかと思った。そして、嵐、ドリフターズのメンバーと比べるとこれまではあまりからむことがなかった元SMAPメンバーとの関係が実現するチャンスにつながっていくのではないかとの可能性も感じたのだ。ファンの欲目と見られても仕方がないが、ももクロにはいくつもSMAPを思わせる楽曲があり*5、ことパフォーマンスに関して言えば新しい地図の3人とももクロの4人には高い親和性があると考えている。
 このようにももクロ新しい地図 (草彅剛・香取慎吾稲垣吾郎)のライブはいろんなことを考えさせ、とても感動的なものだったのだが、純粋にパフォーマンスだけを考えれば、田原俊彦のそれが素晴らしかった。まず第一にスターとはこういう存在だというオーラをまとっていて、テレビなどにはあまり出なくなっている今もそれは変わらないし、ハイキックのアクションの際に上げる足の高さなどダンスの切れが素晴らしく、若いバックダンサーと一緒に同じ動きをしても何ら遜色がないどころか、ターンなどのスピードではダンサーを凌駕していた。
 さらに言えば私は田原俊彦のファンではないどころか、どちらかというと関心は薄かったはずなのにノンストップメドレーで次々と歌った歌のすべてを知っていた。いまではよほど好きなアーティスト以外はそういうことはないわけだが、当時はそうだったんだなと思い出した。
 ジャニー喜多川が亡くなったということは今年の最大の芸能ニュースであり、おそらく年末の歌番組でもいくつも特集が組まれるようだが、この日はもちろんジャニーズ事務所の出演者はいなくて、それは同事務所のこれまでやり方から言えば出来ることではないわけだが、田原俊彦新しい地図の後に出てきた氣志團は自分たちの曲は2、3曲に抑え、「私のもっとも尊敬していた人が亡くなった」との前置きをつけかなり長い尺をとってジャニーズメドレーを歌ったのだ。しかもそのメドレーの中にはこの日3人が歌えなかったSMAPの楽曲も入っていた。これはもちろんジャニーさんへのオマージュであり、功績をたたえるものであり、今回同事務所を抜けた人間を並べたのはのは決してジャニーズ事務所に敵対する意図はないよというのを示した一方で新しい地図の3人の現状への異議申し立てあったのではないかと思う。この辺りのバランス感覚が氣志團の絶妙なところだ。
 今までも近藤真彦ジャニーズ事務所のタレントが出演したことがあるし、そもそも今回田原俊彦に声をかけたことにはマッチが来ているからというのはあったろう。
 今年はスターダストからももクロ私立恵比寿中学が参加したが、BiSHも参加しているし、かつてはAKB48が参加したこともあったはずだ。反骨精神とバランス感覚の絶妙のコンビネーション。これこそ氣志團であり、だからこそこのような地元の危機状態にあえて自らが全てを引き受ける形で開催を決断することが出来たのだと思う。最後に万感の思いをこめて歌った「明日がある」には本当に胸に迫るものがあった。
 

*1:もちろん、そこにはそれだけなく本番スタートの瞬間からフルスロットルでいけるように会場をあたためておくという狙いもあるだろう

*2:<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/FMAYdbw83y8"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=FMAYdbw83y8">ももいろクローバーZ『ツヨクツヨク&未来へススメ』仙台2011-5-14</a>

*3:ももクロSMAP
simokitazawa.hatenablog.com

*4:simokitazawa.hatenablog.com

*5:私がもっともSMAPを連想した曲。今回はリハーサルで声と演奏だけで披露。
<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/UaEoP0mvHFI"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=UaEoP0mvHFI">【ももクロLIVE】ザ・ゴールデン・ヒストリー from「桃神祭2016 〜鬼ヶ島〜」DAY2 / ももいろクローバーZ(MOMOIRO CLOVER Z / THE GOLDEN HISTORY)</a>