ももクロ&アイドル blog (by中西理)

ももいろクローバーZとアイドルを考えるブログ

ももいろクローバーZ「5th ALBUM『MOMOIRO CLOVER Z』SHOW at 東京キネマ倶楽部」@ストリーミング配信

ももいろクローバーZ「5th ALBUM『MOMOIRO CLOVER Z』SHOW at 東京キネマ倶楽部」@ストリーミング配信

 


2019年5月16日(木)東京都 東京キネマ倶楽部
2019年5月17日(金)東京都 東京キネマ倶楽部

「MOMOIRO CLOVER Z」
1. ロードショー
2. The Diamond Four(作詞・作曲・編曲:invisible manners)
3. GODSPEED
4. あんた飛ばしすぎ!!
5. 魂のたべもの
6. Re:Story
7. リバイバル
8. 華麗なる復讐
9. MORE WE DO!
10. レディ・メイ
11. Sweet Wanderer
12. 天国のでたらめ
13. The Show
(アンコール)
Bounus. ももクロの令和ニッポン万歳!

 

 

 


 ライブはアルバム「MOMOIRO CLOVER Z」を収録曲順にショー仕立てに構成したものだった。
<iframe width="560" height="315" src="//www.youtube.com/embed/f-mKBpNsuCU" frameborder="0" allowfullscreen=""></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=f-mKBpNsuCU">【Momoclo MV】ももいろクローバーZ(MOMOIRO CLOVER Z)『The Diamond Four』MUSIC VIDEO</a>
 アルバムのリーディング曲である「The Diamond Four」のMVが黒い衣装を来てライブショーの本番に向かうメンバーの姿を表現しているように今回のアルバムの主題はショーである。
 ももクロのメンバーカラーを思わせる衣装を着た4人のドラァグクイーンが現れ、スカート部分から顔だけを出したももクロの4人が「ロードショー」を歌いだすという意表をついた始まりで見ている観客の度肝を抜く冒頭。その後も小人症の女性ダンサーやアクロバティックな柔軟性を見せる女性、セクシーな衣装のダンサーなど見世物小屋的な意匠の登場人物が次々と現れ、不思議でバーレスクな世界が展開していく。
 アルバムの世界は音楽のジャンルだけでもEDMからラップ、パンク、アンビエントプログレプログレッシブロック)やポップスと千変万化の様相を見せていくが、今回改めて感じたのは歌唱テクニックの向上に加えて、経験を積んだバックのダンサーらと比べても遜色がないダンスの切れ味だった。
 この舞台は客席数500程度というももクロとしては極小と思われる規模の舞台でわずか2日間だけ開催されたのだが、舞台のクオリティーは非常に高く、例えばBUNKAMURAオーチャードホール辺りで1カ月ぐらいの公演をしたとしても十分見合う水準となっているのではないだろうか。アルバム特典の限定配信というだけでは明らかにもったいなさすぎる出来映えであった。
 今から5年前にももいろクローバーZについての論考「演劇としてのももいろクローバーZ」で私は次のように書いた。
>>
ももいろクローバーZのパフォーマンスは2013年春の「5TH DIMENSIONツアー」を境に「全力パフォーマンス」を超えた新しい段階に入った。それはさまざまな演劇的な仕掛けを取り入れながら、音楽を核にしてある種の世界観を提示していくという総合エンターテインメントへの志向である。
<<
 この時点では実は総合エンターテイメントの中身にミュージカル風のショーを考えていたが、この直後に映画、舞台の「幕が上がる」(2015年公開)が発表となり、 陣営への本広克行氏の参加も経て、総合エンターテインメント志向のあり方は当時私が考えていたものとは異なる経路をとることになった。しかし、その時から6年の時をへて今回「5th ALBUM『MOMOIRO CLOVER Z』SHOW at 東京キネマ倶楽部」のストリーミング配信を見る限り、「5TH DIMENSIONツアー」で予想したももクロの総合エンタメ(ショービジネス)への接近はここでついに見事に結実したと感じた。
 このショーはミュージカル「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」のような物語の筋立てこそはないが、等身大ではないショーの担い手としてのももクロを体現しており、作り出された世界観のイメージとしてはマイケル・ジャクソンの「スリラー」のMVや「ロッキー・ホラーショー」などを想起させるようなところがある。
 ももクロはアイドルといっても存在そのもののあり方がキャラ的と感じさせるところが強く、それゆえ演劇的な趣向においても本広監督がこれまで手がけてきたような等身大を思わせる人物よりは突飛なキャラクターのほうが強い存在感を発揮するのではないかと考えていたのだが、今回のライブ(舞台)でのももクロのあり方には「5TH DIMENSIONツアー」や「GOUNNツアー」以来の強いキャラクター性が感じられた。
 注目したいのはこのライブを制作したスタッフ陣は演出やダンスの振付ともどもこれまでももクロを演出したことのある佐々木敦規、本広克行振付家の石川ゆみではない別の人の手によるものであることだ。今回演出*1と振付を担当したのはavecooという人。私は全然名前を知らなかったのだが、twitterなどで検索してみるとその新作舞台について知人である舞踊評論家の乗越たかお氏が詳しくコメントしているから、ショー・エンタメ系のダンス界隈では知られた存在なのかもしれない。
<iframe width="560" height="315" src="//www.youtube.com/embed/ILoygoIp9d4" frameborder="0" allowfullscreen=""></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=ILoygoIp9d4">『FINAL LEGEND Ⅴ』公演作品動画 |作品名:「阿部魁~艶容女舞鏡~」 振付師:avecoo</a>
  振付・演出を担当したavecooについて少し調べてみるとみるきーNMB48時代のソロ作品の振付を手掛けたことがあるなどアイドル分野でも若干の振付経験はあるようだが、今回の作風を考えてみるとそういうことはあまり関係していないと思われ、むしろ『FINAL LEGEND Ⅴ』というダンスコンペティションのようなイベントで「花魁」を主題としたユニークな群舞=上記映像=で準優勝するなどの実績と、個性的な作風がキングレコードの製作陣の目に留まったのではないかと思われる。
楽曲面ではこのアルバムでもinvisible mannersが「The Diamond Four」「Sweet Wanderer」と複数楽曲を提供、一時期のヒャダインにとって代わるような活躍を見せているほか、CHAI、GLIM SPANKYなどの若いアーティストに楽曲提供者の裾野を広げているが、振付など他の分野にもそうした動きは広がりつつあるのかもしれない。avecooのダンスの振付はジャズ・ファンク(Jazz-funk)というジャンルに入るもののようで、石川ゆみやAnnaとはかなり違う動きが含まれているのだが、以前にも書いたがももクロメンバーのダンス表現も以前と比べればいろんなことに対応できるように底上げされていることもあり、ここでも新しい人も加えることで新しい色を出してきているように思えた。
 この舞台(とあえて書くが)はこの後に続く、ももクロマニア(夏ライブ)、明治座公演にも挑戦状を叩きつけた形になったと思う。特に夏ライブは例年のように佐々木敦規が演出することはないとの情報もあり、誰が演出するのか、いったいどんなものになるのかが本当に楽しみとなってきた。その前に本人は挑戦状を受け取ったとおそらく思っているはずの佐々木彩夏(あーりん)のソロコンも控えているが。


simokitazawa.hatenablog.com

www.momoirocloverz-show.com

*1:演出に関しては分担がよく分からないが複数の共同演出者がいるみたいだ。