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「現代日本演劇・ダンスの系譜vol.8 ダンス編・珍しいキノコ舞踊団」セミネールin東心斎橋     

VOL.8[珍しいキノコ舞踊団はダンスで遊ぶ] Web版講義録

 東心斎橋のBAR&ギャラリーを会場に作品・作家への独断も交えたレクチャー(解説)とミニシアター級の大画面のDVD映像で演劇とダンスを楽しんでもらおうというセミネール「現代日本演劇・ダンスの系譜」の第8回です。今回取り上げるのは伊藤千枝*1(=珍しいキノコ舞踊団)です。珍しいキノコ舞踊団*2はこれまでに取り上げたニブロールイデビアン・クルーレニ・バッソなどと比べると神戸アートビレッジセンターびわ湖ホールでも公演しているし、ほかにも国立民族学博物館grafの公演などもあり関西で見られた機会というのは少なくはないのだけれど、いずれも小スペースであったり、劇場以外の空間での公演だったりして、幸運な少人数の観客だけが見ることができたということもいえるかもしれません。今回は関西ではまだ知られていないその全貌に迫りたいと思います。 
 今回はカンパニーからの映像資料の提供を受け、代表作である「フリル(ミニ)ワイルド」「Flower Picking」のほか海外のアートフェスティバルでの貴重な映像なども紹介する予定です。

珍しいキノコ舞踊団
様々な角度から「ダンス」を捉え、その作品の発表を通してオリジナリティーの確立を目指すダンスカンパニー"珍しいキノコ舞踊団"。発表する場も様々であり、劇場空間での作品上演のほか美術館の中庭、ギャラリー、カフェ、オフィス、倉庫、ビルのエントランスなど、大きさや形態も異なる特異な空間での公演も積極的に行っている。様々な空間で立ち上がるダンスを観客とともに体験し、それぞれの場所、それぞれの身体がもっているダンスを探り、楽しむことを主題とする。その常に現代社会にリンクした作品づくりは、ダンス界のみならずデザイン界や現代美術シーンなど、他ジャンルからも高い注目を集めている。代表作「フリル(ミニ)」は、日本舞踊批評家協会新人賞を受賞、アビニヨンほか海外数カ所で上演され、好評を博した。「FLOWER PICKING」は国内公演の後、ストックホルムの野外劇場にて上演、2日間で7000人を動員し注目を集めた。2006年、オーストラリア人アーティスト、ジャスティン・カレオ氏とのコラボレーション作品「3mmくらいズレてる部屋」を発表。2007年秋にシドニーオペラハウスなどで上演された。最新作「あなたの寝顔をなでてみる。」は2008年、国際フェスティバル「JAPAN !CULTURE+HYPER CULTURE」(ワシントンDC)、現代美術展「KITA!! Japanese Artists Meet Indonesia」(インドネシア)に招聘され、公演を行った。
伊藤千枝/振付家・演出家・ダンサー・珍しいキノコ舞踊団主宰1990年、日本大学芸術学部在学中に珍しいキノコ舞踊団を結成。以降全作品の演出・振付・構成を担当。作品発表のほか、映画、映像作品、演劇への振付、出演、他のアーティストとのコラボレーションなど、その活動は多岐にわたる。
2003年、フィリップ・ドゥクフレ「IRIS」に演出アシスタントとして参加。2003年〜2004年、NHK教育番組「ドレミノテレビ」、2007年、映画「めがね」(萩上直子監督)、UA「黄金の緑」などの振付を担当。2005年より桜美林大学の非常勤講師を務める。

1993/10 「これを頼りにしないで下さい」 シードホール
1995/02 「〜の価値もない 」 恵比寿EASTギャラリー
1995/10 「彼女はあまりにつかれていたのでその喫茶店でビートをとることができなかった」 ラフォーレミュージアム原宿
1996/01 「もうお陽さまなんかでなくてもかまわない。」 テアトルフォンテ
1996/11 「電話をかけた。あと、転んだ。」ランドマークホール 
1997/03 「もうお陽さまなんかでなくてもかまわない。 ジュリロミ編」パナソニックグローブ座☆ 
1998/03 「私たちの家」 ラフォーレミュージアム原宿
1999/01 「牛乳が、飲みたい。」 スパイラルホール
1999/10 「あなたが『バレる』と言ったから」 アートスフィア
2000/11 「フリル(ミニ)」 麻布DELUXE☆
2002/03 「フリル(ミニ)ワイルド」 原美術館中庭☆
2002/07 「New Albums」 世田谷パブリックシアター
2004/03 「FLOWER PICKING」CLASKA
2005/03 「 家まで歩いてく。」 彩の国さいたま芸術劇場 小ホール☆
2006/03 「また、家まで歩いてく。」 スパイラルホール ☆
2006/09 「3mmくらいズレている部屋」 金沢21世紀美術館シアター21 ☆
2007/07 「あなたの寝顔をなでてみる。」 吉祥寺シアター
2008/08 「珍しいキノコ大図鑑」ル テアトル銀座 by PARCO
2009/03 「The Rainy table」 山口情報センター

映画「めがね」2007年

(映画「めがね」2007年の映像を見せる)
 まず、この映像を見てください。「めがね」という映画の一部分でここで皆がやっているのが、「メルシー体操」というものなのですが、どこか変ですよね。実はこれを振り付けているのが珍しいキノコ舞踊団の伊藤千枝です。最近はそんなことを言われることも減っていますが、珍しいキノコ舞踊団は「脱力系」などともいわれてきまして、この「メルシー体操」なんかにもそういう雰囲気は出ていると思われます。

 次はこの映像を見てください。UAの「黄金の緑」という曲のPVなのですが、こちらも伊藤千枝の振付です。
UA「黄金の緑」

 もちろん、こういう音楽の仕事もいろいろやっているとは思うのですが、実はこのUAの曲の振付をしているのはUAがううあとして出演しているNHK教育の子供番組「ドレミノランド」で振付を担当したということがあると思います。クレジットがないので確実にそうだとはいえないのですが、次の映像などはおそらく伊藤の振付だと思います。

 この映像などは子供番組で実際に子供も登場しているので余計にそう思えるのですが、これはどこか「お遊戯」を思わせるようなところがありますよね。
実は伊藤は自らのダンスの原点を幼稚園(保育園)の時の「お遊戯会」のダンスだったと答えていまして、今回の表題を[珍しいキノコ舞踊団はダンスで遊ぶ] としたのは幼少の時に体験したダンスの楽しさをそのまま大人になった今も舞台に再現しようとしているように見えます。珍しいキノコ舞踊団の場合、その舞台は彼女たちがダンスで遊ぶプレイグラウンドになります。

 珍しいキノコ舞踊団日本大学芸術学部舞踊専攻の同級生3人(伊藤千枝、小山洋子、山下三味子)によって1990年に旗揚げ。ですから、来年で設立20周年を迎えることになります。土方巽によって創始された舞踏では山海塾、さらにバニョレ国際振付賞に入賞し世界的に有名になった勅使川原三郎といった例外はありますが、日本でコンテンポラリーダンスが本格的に知られ、ブームといわれるようになったのが1990年代の半ば以降。これは海外の批評家によっても日本における90年代のダンスの爆発と言われたりするようになりましたが、その間常にトップランナーの一角としてそのムーブメントを支える重要な一翼を担ってきたのが珍しいキノコ舞踊団です。
 もともと、80年代の後半以降に日本に紹介された欧米のコンテンポラリーダンスピナ・バウシュ、W・フォーサイスローザスなど)に強く影響されて作品創作をはじめた彼女たちは初期のころは「ダンスについてのダンス」、すなわちメタダンスの作り手として知られるようになりますが、その後、「少女性」を強く打ち出した作品群をへて、「フリル(ミニ)」でのアートユニット「生意気」との共同制作をきっかけに大きく方向転換、劇場公演のみに留まらず、カフェや美術館の庭などでの空間パフォーマンスなどサイトスぺシフィックな作品や内外のアーティストとのコラボレーションなども積極的に手掛け、そのキュートでポップな作品性は、現代美術における奈良美智村上隆などと並んで「カワイイ」日本現代カルチャーの最先端として、広く世界に紹介されつつあります。
奈良美智

村上隆

 珍しいキノコ舞踊団がメタダンスつまり「ダンスについてのダンス」と言われていたのはどういうことかというと、初期のキノコの作品には「あ、ここのところの部分はあの振付家の作品のあそこから取ってきたんじゃないか」ということがはっきりと分かるような引用やパスティッシュあるいはパロディーがふんだんにあって、そういう原典を持ってきてそれをこねまわして弄ぶようなところがあったからです。それでも、その作品が単なる模倣ではなくて、オリジナルな作品として受容できるというのはどんな素材を取ってきてもそれを自分たちの味付けで料理して「キノコ印」に刻印してしまうような強い個性があったからです。
ROSAS DANST ROSAS(ローザス=ケースマイケル)


 ダンスを見慣れてない人のためにここでまたyou tubeの映像を見てもらいましょう。まずローザスの「ローザス・ダンス・ローザス」ですが、作品にユニゾンや対位法が多用されていたということにおいても、女性だけのカンパニーだったということでも珍しいキノコ舞踊団が大きな影響を受けていることは間違いないでしょう。ただ、映像からだけでもローザスから感じられる身体強度とキノコの「脱力系」の振付では全然違うのもであるのも確かなことです。
In The Middle, Somewhat Elevated(ウィリアム・フォーサイス


 次はフォーサイスのバレエの代表作である「In The Middle, Somewhat Elevated」です。フォーサイスについていえば伊藤千枝をはじめメンバーが大ファンであることは確かで影響も受けていることは確かですが、それが作品にどういう風に関係しているのかというのは単純には言いにくいところがあります。
ピナ・バウシュ

Impressing the Czar(ウィリアム・フォーサイス


 最後はピナ・バウシュでこちらは手のダンスとか、振付のなかに仕草性をとりこんでいくところとか、ユニソンの動きをしながら一列になって移動していくところとか、枚挙に暇がないほどにそれっぽいところはありますが、元来のアプローチが違いますから、似た印象はあまりないかもしれません。ただ、具体的な影響といえばこれが一番大きい気がします。
珍しいキノコ舞踊団inオーストラリア


 
珍しいキノコ舞踊団紹介映像を流す)
 私がはじめて見たのは1993年10月の「これを頼りにしないで下さい」という作品でこれはうにたもみいちという人が企画して90年代のコンテンポラリーダンスブームのひとつの火付け役となったシードホールのパフォームミックスという企画のなかのひとつで、今風にいえばダンスフェスティバルといっていいのですが、当時日本にはまだそういうものは少なくて、他にはこの時、これももう一方の雄となっていくH・アール・カオスとそれからインターメディアパフォーマンスと称していたNestが参加していました。
 この当時のキノコというのはもうずいぶん以前なので若干記憶があいまいな部分もあるのだけれど、この「これを頼りにしないで下さい」では舞台上に物干し台みたいなのが出てきて、そこにTシャツみたいなカラフルな衣装がいっぱいかかっていて、かかっている音楽に合わせてそれを着たり脱いだりするとか(もちろん裸体になるわけだありませんよ。念のため)、ダンスっぽくダンスを踊るというような場面は意識的に排除されていて、逆に言えば身体表現としての強度が足りないように思われたところもあったのだけれど、H・アール・カオスのいかにも自己表出っぽい表現とは対照的なところがあったのが思い出される。
 その当時のものは残念ながら映像が手元にはないので、少しそこからは時間の経過がありますが、東京グローブ座(当時・パナソニックグローブ座)のグローブ座フェスティバルで上演された「もうお陽さまなんかでなくてもかまわない。 ジュリロミ編」(1997年)を見てもらいたいと思います。
(「もうお陽さまなんかでなくてもかまわない。 ジュリロミ編」映像を一部流す)

 珍しいキノコ舞踊団「もうお陽さまなんか出なくてもかまわない〜ジュリロミREMIX」
 @新大久保・Pグローブ座 (1997/3/7-9 3ステージ) 
 振付・構成・演出:伊藤千枝、小山洋子、山下三味子
 出演:井出雅子、佐藤昌代、樋田佳美、山下三味子、山田郷美、伊藤千枝、大和田有、阿部サダヲ宮藤官九郎村杉蝉之介

 2002年のインタビューで伊藤自身が「こないだたまたま見たんですけど、ダンサーは表情をださない、どんなにおかしいことが起こっていても、いっしょに笑っちゃだめ、がまんしなくちゃならない、気持ち悪いですよ。うわぁ、気持ち悪いッって思った(笑)。すごい不自然でした。ダンサーの存在の仕方がだめでした。でも、それは演出の私たちが要求したものなので、ダンサーに責任はないけど。」と答えているのですが、単純によくないというのじゃなくて、当時と今(も含めてその後)ではダンサーによって表現したいものが変わってきているんじゃないかと思います。
 この当時の振付の特徴としては群舞においてユニゾンあるいは対位法といったローザスのケースマイケルが多用したような形式を頻繁に使い、そこにピナ・バウシュがやったように日常的な仕草性をサンプリングしたような動きを付加していく。そういうのが多かったような気がします。
 転機となったのが次に見てもらう「フリル(ミニ)」です。こちらは初演ではなくて、原美術館での野外バージョン「フリル(ミニ)ワイルド」です。
(「フリル(ミニ)ワイルド」の映像を流す)
 次のレビューでもありますが、この「フリル(ミニ)」はいろんなアーティストとのコラボレーションや劇場以外の空間でのサイトスペシフィックな作品作りなどその後の珍しいキノコ舞踊団のモデルとなるような作品の作りになっています。実はそれまでは珍しいキノコ舞踊団は共同創作をもうひとつの重要な方法論としていたのですが、この作品のあたりからクレジットもそれまでのカンパニー名から伊藤千枝に統一し、伊藤の個人的な個性が強く出るような作風に変化していき、それによってそれまであったユニゾンを多用した群舞のようなものが減って、ダンサーひとりひとりの個性を重視した振付に変わっていきます。

2000-11-25 珍しいキノコ舞踊団「フリル(ミニ)」 レビュー
 珍しいキノコ舞踊団「フリル(ミニ)」(4時〜)を観劇。昨年のアートスフィアの公演「あなたが『バレる』と言ったから」で来日カンパニーにひけを取らぬコンテンポラリーダンスカンパニーとしての質の高さを見せてくれた珍しいキノコ舞踊団だが、純ダンス色の強かった前作と比べ新作「フリル(ミニ)」では狭い空間を使って遊び心に溢れた舞台を見せてくれた。ビートルズのアルバムに例えれば前作が巧緻に構成された「サージェント・ペパー」だとすれば一転して、肩の力を抜いてラフスケッチ風にいくつかのシーンをつないでいった今回の舞台は「ホワイト・アルバム」といったところだろうか。

 もっとも、前回公演でもダンス色の強い作品を振り付けたのは小山洋子で今回、構成・演出・振付を担当した伊藤千枝の作品はかなり遊びの色が強い作品だったので、今回の作品はそれを一層推し進めた作品ということになるだろうか。この舞台ではコンテンポラリーダンスとして踊りますよという感じを極力押さえて、等身大の若い女性が集まって、仲良くじゃれ合っているようなところから音楽に乗って身体を動かしているうちごく自然にダンスが生まれてくるというような構成を取っている。そして、踊っている彼女らが楽しそうなので自然と見ているこちらも楽しくなってくる。既成のダンスを宙づりにするようなメタダンス的なアプローチというのはこの公演の前に見たダンスセレクションでニブロールがやっていたり、キノコも過去にそういうことを何度もやってきたのだが、この作品ではそういうところを通り過ぎて「踊りって楽しいんだよ」というのをあえて理屈抜きにぬけぬけと演じてしまっている。

 山下三味子、井出雅子、樋田佳美、山田郷美、佐藤昌代、飯田佳代子、伊藤千枝の7人のダンサーがそれぞれの個性を発揮しているのもこの作品の魅力で、特に今回はイチゴプリントの衣装で踊ったダンサー(おそらく、飯田佳代子)の派手さはないけどちょっとすました品のいいダンスにいつのまにか引き付けられた。

 最初の方の若い主婦たちの井戸端会議風のシーンをはじめ、この作品ではこれまでキノコの作品で強調されていた少女性とか無垢な感じとはちょっと変わって、それでもやはり「女性」(女ではなく女性)を感じさせる表現で、これはこのカンパニーの今後の方向性を考える意味で非常に興味深いところがあった

 以上が「フリル(ミニ)」初演での感想だったのですが、場所を原美術館の中庭という野外空間に移したのが今見てもらった「フリル(ミニ)ワイルド」で屋外の公演にした分だけ、グラウンドポジションなどは取りにくくて、ダンスとしての制約は出ているのですが、この公演がこの後見ていただく、「Flower Picking」をはじめ、最近では多摩川アートラインプロジェクトでの野外パフォーマンスなど一連のサイトスペシフィックな公演の原型となっていきました。
 「フリル(ミニ)」のもうひとつの特徴は美術家とのコラボレーションで、ここで組んだのは「生意気」というアートデザイナー集団ですが、その後も最新作「THE RAINY TABLE」でメディアアート集団plaplaxと作品を作っているようにいろんなアーティストとの共同制作を行っています。こうした姿勢が珍しいキノコ舞踊団が特に海外では美術界から注目を集めるようになることの理由のひとつとなっています。

構成・演出・振付:伊藤千枝 演出補:小山洋子 音楽:ammakasie noka
 アートディレション:生意気(David Duval-Smith,Michaei Frank) 衣装:宮部惠
 舞台監督:野口毅  照明プラン:大迫浩二 照明オペ:吉村俊弘
 音響:金子伸也[Dream Co.] 映像オペ:西藤芳樹[サービス]
 アナウンス:酒本輝雄 制作:原美術館(坪内雅美ほか)、パブロフ(大桶真ほか)
 主催:原美術館珍しいキノコ舞踊団
 出演:
 山下三味子、井出雅子、山田郷美、佐藤昌代、飯田佳代子、伊藤千枝
 マユタン[ammakasie noka]、小山洋子

 <トム・ジューンズ隊>
 東さくら、いせ☆ゆみこ、河上聡、熊谷陽子、黒沢ゆきえ、佐々木潤、篠崎芽美、
 直麻呂、門間めぐみ

珍しいキノコ舞踊団 
「フリル(ミニ)」 麻布DELUXEhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20001125