これから観る舞台12月後半by中西理
オフィスコットーネアナザー公演『山の声―ある登山者の追想―』(作:大竹野正典、構成・演出:シライケイタ)
12/27(金)〜30(月) 赤坂チャンスシアター 2,500円
「山の声―ある登山者の追想―」は大阪の劇作家・大竹野正典の代表作。新田次郎の小説「孤高の人」のモデルにもなった登山家、加藤文太郎の生きざまと厳冬期槍ケ岳での遭難事故を描いた2人芝居。大竹野はこれを最後に本人も海の事故で亡くなった。「遺作」ともいえるこの作品には彼の魂の叫びが感じられ、涙なくしては見られない。彼が率いた劇団は東京公演がなく、東京での知名度は低い。しかし実際に起きた事件を基に独自の世界観を展開するその劇作は現代演劇でトップの水準。オフィスコットーネアナザーは大竹野作品の連続上演を続けてきたが、今回はそのきっかけともなり、昨年末に上演し評判となった「山の声」を再演する。
笑の内閣『ツレがウヨになりまして』(作・演出:高間響)
12/19(木)、21(土)〜22(日) こまばアゴラ劇場 3,500円
2chan的? Usteam的? ニコニコ動画的?。こういう劇団が出てきたのもきわめてポストゼロ年代的な現象には違いない。2012年の初演時よりますます嫌韓デモが激しくなる中、京都に本拠を置く「思想」系劇団が駒場に登場、ネット右翼をぶった斬る。京都市に住む女子大生、日向あおいは最近同棲中のツレ、富山蒼甫の様子がおかしいことに気をかけていた。気になりパソコンを覗いてみると、韓国への罵詈雑言が。心配するあおいをよそに、蒼甫はK-POPアイドルばかりを呼ぶ近所のスーパー・フジマーケットにデモにでかけるのであった……。どこで聞いたような話((笑)。
初演時の感想 http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20120527
少年王者舘番外イベント『同級生〜咲く汽笛〜』(作:虎馬鯨 構成:天野天街)
12/19(木)〜21(土) 渋谷◎Last Waltz by shiosai 3,300円
今年で少年王者舘に加入して20周年を迎えた、虎馬鯨・夕沈・中村榮美子の3人を中心とした番外イベント。脚本は虎馬鯨が担当し、天野天街は構成で参加。ここ最近王者舘とのコラボが続いている、パスカルズの坂本弘道、谷口正明も音楽(生演奏)で参加。詳しい公演内容は不明だが、おそらく歌やダンスはふんだんに盛り込み、本公演とはまたひと味もふた味も違う少年王者舘の姿が見られそう。
音楽座『ラブ・レター』(原作者:浅田次郎、脚本・演出:ワームホールプロジェクト)
12/21(土)〜23(月・祝) 町田市民ホール 8,400円
オリジナルミュージカルを作り続けてきた音楽座が5年ぶりに手掛ける新作は「メトロに乗って」でかつてタッグを組んだ浅田次郎の短編小説を原作とした「ラブ・レター」だ。前作「七つの人形の恋物語」以来ここまで新作上演がなかったのは未曽有の天災となった東日本大震災の圧倒的な現実の前に音楽座ミュージカルに何ができるかを根源から問い直したからだという。そういう中から生まれてきたこの新作は「死者が生者を励ます物語」。浅田の原作も思わずほろりとくる感動の掌編だが、それを音楽座はどのように料理してくれるのか。期待は大である。
チェルフィッチュ『地面と床』(作演出:岡田利規)
12/14(土)〜23(月祝) 神奈川芸術劇場 4,000円
岡田利規の新作『地面と床』はバンド「サンガツ」がセッションをするように、俳優とバンドによる「生演奏」で楽曲を制作し、実際の舞台上でも俳優の身体と音楽が同じ階層(レイヤー)に置かれる音楽劇。日本語がほとんど誰にも伝わらなくなった近未来の日本を舞台に言葉と故郷を失いつつある社会に生き、記憶と忘却の狭間で揺れ動く〈生者〉たちと、彼らを憂う〈死者〉の利害が対立するさまを描いていく。新しいスタイルへの挑戦がどんな作品を生み出したのか、注目したい。
SPAC『忠臣蔵』(作:平田オリザ、演出:宮城聰)
12/14(土)〜15(日)、12/21(金)〜23(日) 静岡芸術劇場 4,000円
1999年第2回シアター・オリンピックスで静岡県民100人が参加して初演された『忠臣蔵』(作:平田オリザ、演出:宮城聰)は作者である平田自らもその後青年団「忠臣蔵OL編」などとして上演、好評を博してきたが、宮城聰演出版がひさびさに復活する! 戦を知らない侍たちが「討ち入り」に向かっていく日本人独特の意思決定プロセスを現代的に描いた『忠臣蔵』爆笑編。これは必見である。
中西理