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立身出世劇場最終公演「黄昏のカンガルーハイツ」(HEP HALL)を観劇。
「黄昏のカンガルーハイツ」は「演劇というよりは芝居」という座長、関秀人の哲学を最後の最後まで貫き通した舞台であった。学生下宿に集まる若者たちのちょっと古風な青春群像を描いた舞台は立身版の「めぞん一刻」と言いたくなるような設定。今風の物語ではないし、いくらなんでもそんな学生も下宿もないんじゃないか。
思わず突っ込みを入れたくなる個所満載なのではあるが(笑い)、それは関秀人にとっては永遠に消えてしまったノスタルジアの空間なのだと思うとそうした桃源郷としてこの芝居の世界は理解できなくもないのだ。
芝居の最後の方で下宿を閉めるということになって、そこから出ていくことになるであろう下宿人たちに下宿の管理人であるヒロインは「立ち止まることなく、歩き出せ」と語りかけるのだが、それはそのままストレートに劇団を解散しても芝居は続くんだよという関の現在の心情のようで、彼の人柄が伝わってくる爽快な舞台であった。