キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』
ポーランドSF作家のスタニスワフ・レム氏死去。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060328-00000002-jij-int
http://www.asahi.com/obituaries/update/0328/001.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0603/28/news028.html
一般には「惑星ソラリス」の原作「ソラリスの陽のもとに」で知られる、ということになるのであろうが、私が好きだったのは「エデン」「砂漠の惑星」「星からの帰還」。
といったところだが、現時点では「ソラリス」以外は全部絶版なのか……。
「ソラリスの陽のもとに」「エデン」「砂漠の惑星」の3部作はいずれも人類と人類以外の知性生命体とのファーストコンタクトが主題なのだが、このSFとしては使い古されたともいえる主題をもって、コミュニケーションとはなにかについての哲学的な思弁を進めていくところがレムの独自性である。レム以前のSF小説ではファーストコンタクトは共存か敵対かと二者選択により描かれてきたわけだが、この3部作でレムが提示したのは「理解不能」というもうひとつの可能性である。
なかでも、金属性の無生物の集合体としての知性体と人類の宇宙船との壮絶な戦いを描き出したのが「砂漠の惑星」でこれは私がこれまでに読んだSF小説のなかでもベスト・オブ・ベストに入るかもしれない作品。単純な構造でプログラミングをされたユニットが集合体(群れ)として非常に複雑かつ高度な行動をするという発想は「複雑系の科学」が常識となった現代でこそ当たり前のことに思えるけれど、ある意味、集団遺伝学やサイバネテックス、コンピュータープログラミングを何年の先取りしているとも思えるこうした発想は当時においてはちょっと信じられないほど先駆的な思想だったのではないかと思う。
ミステリファンにとっては同じ思想のもとに描かれたアンチミステリ「枯草熱」「天の声」もお奨めである。
ネットニュースによれば
共産主義が瓦解した1989年以降、レム氏はSFの執筆をやめ、政府および団体向けに近未来予想に関するリポートを執筆することに専念した。
同氏はコンピュータ-犯罪、インターネットの拡大により直面する技術的および倫理的問題についても執筆している。
とあり、レムがインターネットをはじめとする現代の科学的な問題をどのように考えていたのかぜひ読んでみたいと思う。
キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書)
- 作者: フリードリッヒ・ニーチェ,適菜収
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/21
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