東京ELECTROCKSTAIRS「水平線サイコ」@アサヒアートスクエア
演出・振付 KENTARO!!
<出演> 伊藤知奈美 大江麻美子 金澤百合子 川口真知 高橋幸平 山本しんじ 横山彰乃 aokid KENTARO!! (50音順) Time table ※開場は開演の30分前です 1月20日(木)19:30 21日(金)19:30 22日(土)15:00 / 19:30 23日(日)15:00 東京ELCTROCK STAIRS WEB → http://www.tokyoelectrock.com/
お問合せ CAN tel:03-5457-3163 http://www.cancancan.co.jp/
ヒップホップ出身のKENTARO!!率いるカンパニーの単独公演第3弾。ひさびさにダンスの本来の動きの魅力を堪能させてもらった。KENTARO!!はやはり本当に突出した力を持つダンサーだと再認識した。技術だけならもっとうまい人もいるだろうが、特に即興でフリーフォームな動きになった時の彼の動きのよどみなく流れるような動きはヒップホップの動きを基礎とはしているのではあろうが、彼ならではの独特な動きで、きわめて魅力的である。それゆえ、これはKARASにおける勅使川原三郎もそうだし、BATIKの黒田育世もBABY−Qの東野祥子もそうなのだが、それがグループ作品であってもどうしてもソロのダンスを期待して待ってしまうようなところがある。
東京ELECTROCKSTAIRSも振付を担当するKENTARO!!のダンスが魅力的なだけに前回見た「Wピースに雪が降る」ではどうしてもそういう部分があったのだが、今回は残りのダンサーの個々の個性が以前よりも際立ってきて、そのうち幾人かにはスターダンサー候補性としてのきらめきを感じた。まず、目立ったのが赤のボーダーの衣装で踊っていた女性ダンサー(おそらく伊藤知奈美)の存在感である。KENTARO!!の振付にはそれぞれソロで踊るパートや全員での群舞のほかに相手が入れ替わりながらのいくつかのデュオの場面、トリオの場面とバラエティーが豊かで、それが見飽きさせない効果を生んでいるのだが、どの場面でもこの舞台において中心的な存在だったのが彼女で、特にKENTARO!!とのデュオではKENTARO!!に負けない体の切れ味を見せ、ふたりのユニゾンの動きが調和して快かった。また、川口真知とのデュオのところは以前にもミュータント・ライセ (KENTARO!! 伊藤知奈美 川口真知) のユニット名での舞台を見たことがあるが、息が合っていて互いの相性のよさを感じさせた。川口はほかの場面では「真知だよ」などと観客席に向けて話しかける場面も用意されていて、会場の雰囲気を和ませるような個性も持っていて、これもなかなかの魅力を感じた。
この公演に集まったダンサーはKENTARO!!の教え子や仲間系のヒップホップ出身のダンサーとコンテンポラリーダンス系のダンサーが入り交じっていて、コンテンポラリー系の代表としてはBATIKのダンサーでもある大江麻美子も参加しているのだが、彼女の場合も相当に体が動くダンサーではあるのだけれどストリート系のムーブの切れ味はまだこれからというところかもしれない。ただ、ソロ場面などではほかのダンサーとの特性の違いを生かした振付をKENTARO!!は振り付けており(それが振付であるのかどうかは不明だが)、作品全体としては面白いアクセントとして機能していたのではないかと思う。
男性ダンサーは女性と比べるとよく言えばういういしさなのだが、悪く言うとまだこなれていないところがあって、特にKENTARO!!と若いダンサー(高橋幸平?)がデュオでユニソンで踊ったところなどは同じような動きで動いているだけに逆にどうしてこうも違うのだろうなどと思ってしまったが、ただ一生懸命さは伝わってきて、これはこれで現段階では好感が持てた。
おかしな存在感を見せていたのがaokid 。もともとブレイクダンサーでグループの一員としてその分野の世界大会に出場したというから強靭な身体能力などをところどころで見せるのだが、冒頭近くの観客がほとんど完全に引いてしまうような寒いギャグを連発していた場面など飛び道具的な個性のほうが今回は目立った。
そして、言うまでもないが時折踊って見せるKENTARO!!のダンスはやはり魅力的であった。コンセプト中心のダンスが全盛の昨今、踊ることの楽しさを体現できるカンパニーとして注目していきたいと思う。
最後に東京ELECTROCKSTAIRSとは直接関係ないが、ポーランドのショパンフェスティバルに参加したKENTARO!!のパフォーマンスの映像をyoutubeで見つけたのでここにリンクしておくことにした。
http://www.youtube.com/embed/e3dCFD430VU