冨田勲×初音ミク「イーハトーヴ交響曲」再演演奏会@渋谷オーチャードホール
[演目]
冨田勲作曲
第1部
「新日本紀行」
「子どものための交響詩 新・ジャングル大帝 2009年版 ジャングルの朝〜動物たちのつどい」
「山田洋次監督 映画音楽集 たそがれ清兵衛〜隠し剣鬼の爪〜武士の一分〜おとうと」
「勝海舟」
第2部
「イーハトーヴ交響曲 全曲」
[花巻&東名阪 共通出演アーティスト]
<ヴァーチャルシンガー>初音ミク
<エレクトロニクス>ことぶき光 <パーカッション>梯郁夫
冨田勲が初音ミクを歌姫に起用し作った宮沢賢治の音楽劇である。年が分かるが、私が自分でお金を出して最初に買ったLPレコードが実は冨田勲がムーグシンセサイザーで制作した「月の光」「展覧会の絵」だった。高校時代には小遣いをはたいて名古屋まで8チャンネルスピーカーを使用したという冨田勲のライブコンサートにも行った。回路の塊である巨大な怪物・ムーグシンセサイザーを操り、見事なハーモニーを奏でて電子音楽への入り口を開いた冨田が数十年後に80歳にしてその遠い子孫である初音ミクと出会ったのは数奇な運命ともいえるが、見えない力に導かれての必然とも思う。
実は初音ミクについては今年の春シアターアーツという演劇批評雑誌に「平田オリザ/初音ミク/ロボット演劇」*1という批評を書いた際に平田の演劇メソッドの参照項としてボーカロイドソフトとしての初音ミクのことを取り上げて、渋谷慶一郎のよるボーカロイドオペラ「THE END」のことを分析したが、その際には「初音ミク」現象自体にはあえて踏み込むことはしなかった。というのはニコニコ動画やyoutubeでの初音ミクの動画作品群を通じて、ひととおりのことは知っているつもりではあってもミクパとして知られるライブイベントには実際には参加したことがなく、ボカロの音楽のリアルタイムの享受者としてはほど遠い私は初音ミク現象自体に踏み込んだ分析、すなわち「初音ミク論」を書く人間としては不適格だと思っていたからだ。
ただ、そうした現場に興味がないというわけではなくて、実際にいくつかの現場に自分の足を運んで、どういうことが行われているかを見に行きたいとは思い、8月30日にはまずファンの間でミクパとして知られているライブイベントのひとつ横浜アリーナで開催された「初音ミク 夜公演★モアチャンス」に出かけてみた。今回はそれに続くライブの初音ミク鑑賞となったが、こちらは実は「THE END」を見る以前からNHKの番組で初演のことを紹介していたのを見た時から前述のように冨田勲のファンだったということもあり、再演でもあったらぜひ見てみたい舞台だったのである。