青☆組『青色文庫 −其参、アンコール選集ー』Cプログラム@アトリエ春風舎
作・演出:吉田小夏
C『時計屋の恋』 *第10回日本劇作家協会 新人戯曲賞 入賞作品
ある小さな田舎町の、お彼岸の一日を描く群像劇。「待ち人来たらず」のくじを引いた人々を、そっと見つめる物語。
青☆組「時計屋の恋」@アトリエ春風舎観劇。オーソドックスな現代口語群像劇である。秋の祭りが間近に控えたお彼岸の1日。妻を亡くし、長年やってきた時計店を閉店したばかりの初老の男の元に近所の人々、帰省してきた親類縁者が三々五々と訪ねてくる。示されるのは何でもない日常の光景だが、そんな日常の関係性の中にも男の妻を喪っての喪失感、同居する義理の娘が東京に単身赴任している息子とうまくいっておらず、お彼岸にも帰ってこないこと。丁寧に書き込まれたさまざまな「不在」が登場人物らの関係性に微妙な影を落としていく。
そうしたことごとは最初は明示されることはなく伏線としてのみ示されるが、物語の最後に至って初めてその姿を見せていく。典型的な「関係性の演劇」のスタイルゆえにともすれば既視感が生まれかねないが、今回はリーディング公演であるためにリアルな戯曲が適度にその制約を受けて様式化されることでいいアクセントが付いたかもしれない。