ももクロ&アイドル blog (by中西理)

ももいろクローバーZとアイドルを考えるブログ

フジテレビ系『2017FNS歌謡祭』


ゆず 今夜君を迎えに行くよ クリスマスソング

フジテレビ系『2017FNS歌謡祭』

 「第1夜」12月06日(水)午後7時~午後11時28分

12月6日と13日の午後7時から二週合計9時間にわたって生放送される年末恒例のフジテレビ系音楽特番『2017FNS歌謡祭』の「第1夜」(6日)にももいろクローバーZの出演。ゆずとのコラボにより、クリスマスソングの「今夜君を迎えに行くよ」を歌った。

  SNS上ではれにちゃんのクリスマスツリー衣装が話題になったほか、ミニスカサンタ姿の

「あーりんかわいい」のツイートも相次いだ。この2人はそれぞれのポジションもあるが、ライト層への訴求力があることを再確認した。

   この日の出番はこれだけで、フジテレビもももクロを干したの声も一部ファンから出ていたが、明らかにはなっていないが、今回は玉井詩織のドラマ収録などの絡みでリハスケジュールが充分にとれなかったのが、原因ではないか。インタビューも嵐の直後で出番の時間帯も悪くはなかったのではないかと思う。

 テレビ関係者の知り合いから「ももクロは局の担当者への圧力によってシングル曲が歌わせてもらえないことになっているから」などという話を聴いたことがあるのだが、実はこの件については本当に具体的な圧力があるのかどうかについて私は懐疑的。ただ、ももクロが歌番組に一度も呼ばれることのない局については圧力ないし何らかの忖度はあるんだろうなとは思っている。

 今年に関してはももクロの「2017FNS歌謡祭」の出番が少なかったのは(参加の発表がぎりぎりになったことも勘案すると開催時期を前倒しにした「ももいろクリスマス」の影響でぎりぎりまでスケジュール調整がつかなかったからではないか。

 

 

うさぎストライプ『ゴールデンバット』『セブンスター』(作・演出:大池容子)@アトリエ春風舎

** うさぎストライプ『ゴールデンバット』『セブンスター』(作・演出:大池容子)@アトリエ春風舎 

    うさぎストライプ「ゴールデンバット」@アトリエ春風舎観劇。菊池佳南のひとり芝居。青年団リンクホエイに引き続き2作品連続でアイドル役だが、前回の怪談アイドルに続き今回は懐メロアイドルと、地下の中でもB級感が漂うのはなぜ?これはもう「青年団のアイドル」と名乗ってもあながち間違いではないかもしれない(笑)。

    作者も主演も30前後のはずだが、渡辺真知子ちあきなおみフォーク・クルセダーズカーペンターズ……。この選曲はいったいどこで知ったのだろう?懐かしいけど受験時のBGM太田裕美なら私と同世代。大学時代には山口百恵やキャンディース。少しすれば大滝詠一も流れてたはずと指摘すると「あれはBGMだ」とのこと。そんなことがあるのだろうか。

   懐かしいけど受験時のBGMが太田裕美木綿のハンカチーフ*1同世代。大学時代には山口百恵キャンディーズ*2。もう少しすれば大滝詠一も流れてたはずと指摘すると「あれはBGMだ」とのこと。そんなことあるのか。

   大池容子はもともとは相対性原理とかゆらゆら帝国とか割とこじゃれた音楽を劇伴音楽に積極的に使うので知られている演出家だが、この「ゴールデンバット」ではアイドルにあこがれて東京に出てきたが夢を果たせずに終わった女と夢を追いかけて地下アイドルを続けている女の2人が一瞬の交差をするという出来事を菊池佳南が歌い踊り、子供から老人まで数役を演じ分けるというワンマンショー的な構成。

 とはいえ、不思議なのは設定だけから言えば「あまちゃん」のような雰囲気にも出来るのになぜこんな風にレトロな音楽を集めたレトロな感覚の舞台になったのか。普段のうさぎストライプとはまったく感じが異なるのでこれにはびっくりした。

 いずれにせよ自分も年をとったものだと少し悲しくなった。などと書いていたら、フォーク・クルセダーズはしだのりひこが亡くなったことが報じられた。はしだのりひこ青年団女優の端田新菜の御父君でもある。

   うさぎストライプ「ゴールデンバット」@アトリエ春風舎観劇。菊池佳南のひとり芝居。青年団リンクホエイに引き続き2作品連続でアイドル役だが、前回の怪談アイドルに続き今回は懐メロアイドルと、地下の中でもB級感が漂うのはなぜ?これはもう「青年団のアイドル」と名乗っても間違いではない(笑)。

 

  

大人になれない
大人のための
うさぎストライプ
LINEで送る

ゴールデンバット

菊池佳南の新作一人芝居。

数十年前、アイドルになるために上京した女は、叶わなかった夢を追うように地下アイドルのライブに通い始める。そこで出会った一人のアイドルに、女は心を奪われていく。

*第2回いしのまき演劇祭 参加作品

 
『セブンスター』

二〇一二年、二〇一六年と上演を重ね、今回が再々演。

ガレージで一人、自転車を組み立てる男は、幼い頃に宇宙飛行士になりたいと思っていた。JAXAのロケット開発者を目指していた兄と共に宇宙を夢見た彼は、未だに捨てられない宇宙への憧れと、初恋の〈あの子〉の言葉を忘れられずにいた。

*1:木綿のハンカチーフ」は1975年 12月21日発売。松本隆作詞、筒美京平作曲。番組3時間のうち2時間が松本隆縛りとなる12月27日の「ももいろフォーク村 フNS音楽祭」ではももクロが必ず歌うはずだ。

*2:キャンディーズ解散は78年、山口百恵引退は80年だった

「ももクロ/ラップ/演劇」 ももクロからラップについて考察してみた


堂々平和宣言

youtube.com

** 佐々木敦×環ROY×吉田雅史「日本語ラップの『日本語』とは何か?」

 


昨今のMCバトルを端緒とする日本語ラップブーム。いまだその勢いはとどまることがないが、良く考えてみれば「日本語ラップ」という表記は、少々特殊な表現ではないだろうか。かつて起こった「日本語ロック」論争は、日本語でロックを歌うことが可能かどうかという議論だった。やがて日本語のロックが世に溢れ出すと、「日本語」という修飾語は不要なものとなった。同様に「日本語ラップ」が可能であることを今さら疑う者はいないだろう。しかしながら「日本語」という修飾語がジャンル名から取り去られることは、今のところなさそうだ。

その日本語ラップのリリックを追ってみれば、いわゆるバイリンガルスタイルと言われる、英語を多く取り入れたスタイルも多く聞かれる。一方で、環ROYの最新作『なぎ』は、日本語の表現にこだわった作品だ。その詩作方法は、短歌やJ-POPを参照するなど、主にアメリカのそれを参照する多くのラッパーたちとは一線を画すものだ。またダンサーの島地保武とのライブパフォーマンス『ありか』では、即興を軸にしたダンスとラップの交点という別の角度から、日本語という言語の可能性を追求している。

そんな日本語に独自のこだわりを持つリリシストと、『ニッポンの音楽』などの著書でも日本語の歌について考察してきた佐々木敦、自身もラッパーの視線で『ラップは何を映しているのか』などで日本語ラップに着目する吉田雅史の3人が、「日本語のうた」としての「日本語ラップ」について議論する。



    吉田雅史によるレクチャートークを聞くのはこれで2回目。面白いが、全体を大きく俯瞰するというよりも個別のアーティスト(この日は環
ROY)の他との微細な差異をクローズアップして照射していくようなところがあって、その分析の手つきには巧みなものを感じるし、興味深くはあるのだが、やはりそれは今回の場合だったらラップとかヒップホップの海外国内の流れにある程度は精通している人がメインのターゲットなんだろうと思った。前回はSCOOLでビートメイクについての話を聞いて「群盲、象をなでる」の感がしたと感想を書いたが、今回もそれは相変わらずで、何度かレクチャーを聴講していけば次第に空白部分が減っていくのかもしれないが、こういうのはそうでもないかもしれない。
   環ROYについては以前contact  Gonzoとコラボをパルテノン多摩の野外ステージで見たことはあって、ラッパーと呼ぶにはちょっと変わった感じの人だなとは思ったが、楽曲についてはあまり聞いたことがなかった。今回レクチャーでも話題になった「ふることぶみ」という曲をYoutubeで聞いて見たのだが 、曲もよかったし、いささか異端児だがこういうのラップといっていいんだというのが興味深いと思った。
   このトークではいとうせいこうについては一瞬ふれはするものの具体的な言及はついになく、ブッダブランド「人間発電所」のリリックの分析から論を始める。日本語としては異常に畳語が多いほか文法的にも日本語に不適な用例が散見されるなどの特徴をあげつらっているのだが、次にくらべるのが環ROYでは飛躍がありすぎではないか。


  私が知りたかったのは単純に私でも名前は知っているスチャダラパーRHYMESTERリップスライムキック・ザ・カン・クルーなどといった人たちが日本語ラップにおいてはそれぞれどういう役割を果たしてきたのかというけっこうベタな歴史だったのだが、ここはそういうことの語られる場ではなかったようだ。
 ラップについてはまったくの門外漢ではあるけれど少し以前から興味は持っていて、それには大きく分けて2つのルートがある。ひとつはままごとの「わが星」や杉原邦生演出時の木ノ下歌舞伎のようにポストゼロ年代の演劇においてラップが舞台上に登場するには珍しくなくなっていて*1、現代口語とラップの関係に興味があること*2
 もうひとつは私の好きなアイドルのももいろクローバーZがアイドルとしては珍しくラップ曲を歌い、そうでない曲の場合も歌唱を一部がラップであるという曲が数多く、そういうことがラップ本丸のファンからするとどのように見えているのかが知りたかったこと。
 実はこのうち後者はもちろんそのことが直接触れられたわけではないけれど、表を使ってラップおよびラッパーの演者が置かれている構造の分析のようなことがあって、それではラップというのは単なる音楽のスタイルやフレージングなど歌唱のスタイルをいうのではなくて、作者/演者/歌われる意味内容が3位一体のようになって成立するんだということが言われていて、そういう文脈の中では例えばアイドルだからという以前に他人の書いたリリックを別の演者が歌うということについての拒否感情からいえば、例えばももクロのラップ曲をラップファンが受け入れたりするというようなことには私が予想した以上の大きな壁があるんだなというのが分かったという意味で興味深かった。
   素人の私にも分かる程度のことでももクロとラップ関係を紹介するとももクロの曲にラップパート多いのは以前在籍しいまは女優をしている早見あかりが声のキーが低く、皆と同じキーで歌えなかったため、彼女のためラップパート付け加えてもらい、そこに早見だけでなく他のメンバーも入れ替わり立ち代わり入ることになり、アイドルグループなのにどの曲にもラップが入るのが普通のことになっていたという経緯がある。
   実は他の分野でもそういうことはあるのだが先に紹介した2つのこと、演劇とももクロはことラップに関しては無関係なはずだが、いくつかの結節点において関係しあっている。
    最初はいとうせいこう。彼が日本におけるラップの創始者の重要なひとりであることはラップおよびヒップホップの世界では常識のようだ。そういえばラップを使った演劇の例としてリーディング公演「ゴドーを待ちながら」を演出した宮沢章夫のことを取り上げたが、いとうせいこうは宮沢が率いたラジカルガジベリンバシステムの重要なメンバーのひとりでもあった。
    いとうせいこうのことを長々と書いたのはももクロにオリジナルとして提供された最初のラップ曲「5 the Power」を書き下ろしたのがいとうせいこうだったからだ。この曲はその後、ライブでも折に触れ歌われる定番曲になっている。
  とはいえ、「5 The POWER」はいとうせいこう作詞、MURO、SUI作曲の本格的ラップ曲とはいえ、まだリリックやメロディーには若干のアイドル楽曲らしさが垣間見えたのさがあるが、作詞:鎮座DOPENESSの「堂々平和宣言」には最初に耳にしたときには驚いてぶっとんだ。
もともとは映画「遥かなるしゅららぼん」の主題歌だったこともあるのだろうが、女性アイドルが歌うと言うことを想定したとは到底思えない曲想である。アイドルのラップなどというと一般層にはいまだにEAST END×YURIのようなイメージが強いと思われるが、この「堂々平和宣言」は一度ライブ映像で確かめてみてほしいが、それとは対極的な楽曲なのだ。
  「5 The POWER」でももクロいとうせいこうのリリックをどのように歌いこなしたかを踏まえたうえでのこの楽曲だと思わせるが、あくまで想像だが前者にかかわったアーティストとは世代の違う若い鎮座DOPENESSに対し、レコード会社のプロデューサーである宮本純之助が「あなたならどう使う」と挑発した可能性さえあると思っている。
作詞:鎮座DOPENESS / 作曲・編曲:MICHEL☆PUNCH・KEIZOmachine! from HIFANA・EVISBEATS


堂々平和宣言 ももいろクローバーZ
 それというのはこちらはほぼ間違いなくこの曲を受けてと考えているが、「堂々平和宣言」の後に今度は 「5 The POWER」製作に作曲者として参加していたMUROが「もっ黒ニナル果て」という楽曲を提供しているのだけれど、これが「もっ黒」という言葉に代表されるようにアフリカ系アメリカ人の音楽としてのラップをそれまで以上に感じさせる曲で、こうした楽曲のキャッチボールにはももクロを媒介としたバトル合戦のような部分が感じられ、ある意味「ヒップホップらしさ」を感じるからだ。
 ももクロラップ曲の最新バージョンは「Survival of the Fittest -interlude-」(作詞:サイプレス上野 作曲:invisible manners 編曲:invisible manners、伏見蛍)。

「Survival of the Fittest -interlude-」
www.youtube.com
Blast!
www.youtube.com
「Survival of the Fittest -interlude-」はシングル「Blast!」の収録曲でタイトルの「 -interlude-」の「間奏曲」の意味通りに前山田健一によるスタート曲の「Yum Yum」とメインの表題曲「Blast!」の間に置かれて、表題曲への導入を即すような役割を果たしている。「Blast!」自体はラップ曲とは言いがたいが曲を提供したinvisible mannersは「“様式”はHIPHOP的だけれども“ポップス”という文脈で語られる楽曲」とコメントしているようで、特に玉井詩織の担当するラップ部分のフローは原曲のリリックになぞらえるなら「これをこなせる人はそう多くはない」。
 さらにいえば「Blast!」の表題も1999年~2007年に発行されていたヒップホップ専門音楽雑誌である「blast」と無関係とはいえないだろう。何といっても「blast」最終号には特別付録として、日本のヒップホップの未来を担うとされた5人(最終号の特集「THE FUTURE 10 OF JAPANESE HIP HOP」の中から選出)にDABOを加えたメンバーによるEXCLUSIVE CD(「未来は暗くない"THE NEXT" / Anarchy、サイプレス上野、COMA-CHI、SIMON、SEEDA Introduction by DABO」)が付いていて、そこにはサイプレス上野も参加していたのだから。

ももいろクローバーZ「Survival of the Fittest -interlude-」 from 『BLAST!』 - YouTube

ももクロラップ曲の最新バージョンは「Survival of the Fittest -interlude-」(作詞:サイプレス上野 作曲:invisible manners 編曲:invisible manners、伏見蛍)。

「Survival of the Fittest -interlude-」
www.youtube.com
Blast!
www.youtube.com
「Survival of the Fittest -interlude-」はシングル「Blast!」の収録曲でタイトルの「 -interlude-」の「間奏曲」の意味通りに前山田健一によるスタート曲の「Yum Yum」とメインの表題曲「Blast!」の間に置かれて、表題曲への導入を即すような役割を果たしている。「Blast!」自体はラップ曲とは言いがたいが曲を提供したinvisible mannersは「“様式”はHIPHOP的だけれども“ポップス”という文脈で語られる楽曲」とコメントしているようで、特に玉井詩織の担当するラップ部分のフローは原曲のリリックになぞらえるなら「これをこなせる人はそう多くはない」。
 さらにいえば「Blast!」の表題も1999年~2007年に発行されていたヒップホップ専門音楽雑誌である「blast」と無関係とはいえないだろう。何といっても「blast」最終号には特別付録として、日本のヒップホップの未来を担うとされた5人(最終号の特集「THE FUTURE 10 OF JAPANESE HIP HOP」の中から選出)にDABOを加えたメンバーによるEXCLUSIVE CD(「未来は暗くない"THE NEXT" / Anarchy、サイプレス上野、COMA-CHI、SIMON、SEEDA Introduction by DABO」)が付いていて、そこにはサイプレス上野も参加していたのだから。
   最後にももクロとラップの関係についてもう一度考えた時にひょっとして実は親和性が高いのではないかと考えている。というのは吉田雅史のレクチャーによれば通常ラップは作り手=ラッパー=語ることの意味内容であり、ほとんどの場合は語られる内容は「俺はいかに凄いか」というような「自分語り」である。ももクロの場合もほとんどの楽曲が何かの主題を語ると同時に実にももクロ自身のことを語っているという「自分語り」的な言説として歌われるような構造になっているのが特色なのだ。
 例えばヒャダインによる「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」。これはアニメ「モーレツ宇宙海賊」の主題歌として宇宙を冒険していく登場人物たちのことを歌っているのではあるが、それと二重写しにアリーナなど大規模な会場が増えてファンとの距離が離れてしまったという指摘が一部出てきたのに対し「何億光年離れても宇宙の彼方から愛を叫び続ける」というメッセージを呼びかける歌である。
 これと同様なことは「堂々平和宣言」にも言える。これも映画の主題歌であるとともにあるテレビ番組で百田夏菜子ももクロの究極の目標は「世界平和」であると話して、モノノフ以外全員に笑われたが、この歌はその世界平和を訴えた歌という風にも考えられるからである。

 

*1:最近では宮沢章夫演出のリーディング公演「ゴドーを待ちながら」にもセリフをラップで語るという趣向が登場していた

*2:日本語ラップというのでそういうことが語られるかなと勝手に期待したが、少し聞いているうちに文脈的に全然そうじゃないことが分かった

「なにわンダーランド2017 ~OH!CIRCUS~」@幕張メッセ


[HD]たこやきレインボー、サーカス気分の幕張メッセ公演,Tacoyaki Rainbow‬, ‪Momoiro Clover Z‬, ‪Japan‬, ‪Makuhari Messe‬.

 「なにわンダーランド2017 ~OH!CIRCUS~」@幕張メッセ

さて、今回はどんな演出なのか。予測できるのはシルクドソレイユ的なアクロバットがからんでくるだろうということとと今回もなにわンダーたこ虹バンドが参加するということぐらい。ももクロと違って誰が実際に演出しているのか裏の事情が分からないのであまり予想がつかない。それでは実際にどうだったのか。
 
「TARGET ON(ターゲット・オン)」。ももクロの妹分である私立恵比寿中学やチームしゃちほこが「ももクロは特別だから」とそことどう差別化を図ることを戦略の柱としてきているなかで、たこ虹だけがももクロがこれまで追求し続けてきた「総合エンターテインメントとしてのアイドル」にまっこう勝負を挑んで、もちろんまだまだいろんな面で実力の差はあるものの、何年後かの自らの姿に「ももクロ」を確実に照準に捕ら後輩グループの中でも彼女らはひょっとしたらものが違うのでは。そんな風に思わせるライブだった。
 もちろん、たこ虹の場合も主要な楽曲はヒャダインによるものだし、今回の「~OH!CIRCUS~」のサーカス芸人が参加しての演出も、バンド演奏も、さらにいえばライブ会場周辺に設けた縁日的な祝祭空間もすべてももクロの真似じゃないかといってしまえばそのとおりでもある。しかし、こういうことができてしまうのは運営が持っている柔軟な機動力があってこそだし、内幕は分からない*1のだが、それを可能としている現場の機動力には相当なものがあると思う。
 

  パフォーマンス的なことで言えば歌唱力の向上が目覚しかった。たこ虹は相対的にいえばメンバーの歌唱力は最初からももクロなんかと比べるとそれなりに歌える子がそろってはいたのだが、やはり、この春から生バンドと一緒にパフォーマンスを行い、そういう中でおそらく日常的にもボイストレーニングを繰り返すことで 声の伸びや張りが全然違ってきていて生バンドの演奏に拮抗できるものとなるつつある。メンバーの中でも歌がうまい方だった堀くるみもフェイクやロングトーンの出し方でよりうまさが際立ってきており、メインボーカルをまかせられることが多く、事実上センター的な役割を果たしている清井咲希も以前はうまいが声量がもう少しあればと思うことがあったが今回は大箱ライブにも関わらずそういう感じはなくなっており、2トップの安定性は格段に上がった。

 とはいえ、こと歌に関してはもはや主砲の貫禄と目を見張ったのが彩木咲良。「ナンバサンバイジャー」の英語での伸びやかなソロ部分の歌唱などは本当に見事なもので、もともと声量はあり素質的には恵まれていたが、最年少ということもあって幼さが残っていたが、今回はそういうこともなくて、今後は徐々にエース的なポジションを獲得していくかもとの予感を感じさせるプレゼンスだった。

(続く) 

 

たこやきレインボー「なにわンダーランド2017 ~OH! CIRCUS~」
2017年11月23日 幕張メッセ国際展示場8ホール セットリスト

01. ありがとう たこやきレインボーです
02. 恋するビリケンさん
03. 尼崎テクノ
04. じゆう!そう!フリーダム!
05. めっちゃFUNK
06. ナンバサンバイジャー
07. なにわのはにわ
08. オーバー・ザ・たこやきレインボー
09. にじースターダスト
10. めっちゃDISCO
11. どっとjpジャパーン!
12. サンデーディスカバリー
13. TACOYAKI's Burning
14. 踊れ!青春カルナバル
15. たこ虹物語~オーバー・ザ・関ケ原
16. RAINBOW~私は私やねんから~
17. なれたらなぁ
<アンコール>
18. 絶唱!なにわで生まれた少女たち
19. めっちゃPUNK
20. ナナイロダン
21. ちゃんと走れ!!!!!!

【会場】千葉・幕張メッセ 国際展示場8ホール
【日程】2017年11月23日 (木・祝)
【時間】開場16:30 / 開演18:30
【チケット料金】全席指定 5,000円(税込)

 

*1:たこ虹はチームしゃちほこを手がけている店長こと長谷川氏の傘下にあったはずだが、最近は番長ことマネージャーがほぼ仕切っていて長谷川店長は関与してないように思われる

「Live to the World 2017 ~J-MELO Awards 10th Anniversary~」@豊洲PIT

「Live to the World 2017 ~J-MELO Awards 10th Anniversary~」@豊洲PIT


  ももクロも最近は楽曲の曲数が増えてきたので、1回のライブでやりたい曲を全部やるというのは事実上不可能。それゆえ、どんなライブでも「なぜあの選曲だったのか」という不満の声が上がるのが恒例行事となっているが、この日のように選曲の方向性がはっきりしていると納得がしやすいかもしれない。
 このLIVEはNHKの音楽番組J-MEROの10周年記念の番組で放送するための収録も兼ねていた。さらに共演者もMC役ということで2曲だけを歌ったMay Jのほかは、アニメ主題歌を多数歌っていて海外での人気も高いFLOWも一緒に出演することもあってNHKの国際放送であるNHKワールドの放送することもあり、海外視聴者を意識したセットリストとなったようだ。
 ライブの柱は2つあった。ひとつは「和」を強調した演出。ももクロのライブでも「桃神祭」などに参加しファンにもおなじみのヒダノ修一が率いるヒダノ修一 スーパー太鼓セッションがこの日は一緒に出演した。
 番組としてもこの日の主題的にFLOWのアニメ主題歌、ヒダノ修一 スーパー太鼓セッションが現代日本の音楽文化を象徴する2つの方向性として選択されたと思われるが、自らの出番パートが来る前にももクロはゲストミュージシャンとしてこのセッションに加わった。
 中でもこれは凄いと思ったのは「GOUNN」の和楽器伴奏アレンジの披露。GOUNNではオリジナルの音源では「マホロバケーション」などでもおなじみのハマ・オカモトが参加しているのだが、この日はスーパー太鼓セッションのベース奏者としてカシオペア鳴瀬喜博が演奏。得意のチョッパー奏法で弾きまくり、観客を狂喜乱舞させた。
ダウンタウンももクロバンドやKISS、マーティー・フリードマンらとのコラボもそうなのだが、キャリアは全然比べ物にならなくても世界中の一流ミュージシャンとでも渡り合うことができるがももクロの醍醐味だ。しかも以前なら頑張って一緒にやらせてもらっているの感が強かったがこの日のGOUNNは贔屓目もあるかもしれないが、歌もダンスも以前見たときとは違って抜群の安定感があり、マジで対等にやりあっているように見えた。
 ももクロが参加した2曲目は「ニッポン笑顔百景」でこちらはすでに西武ドーム津軽三味線吉田兄弟との共演もあるし和楽器アンサンブルでの演奏も何回かやっているから、攻めるんだったら「マホロバケーション」でしょうなどと現地では思いもしたが、帰宅してから冷静になって考えたら、この日のもうひとつのテーマは「アニメ」で忘れてはいたがこの曲はアニメ「じょしらく」の主題歌でもあり、そういうこともあって「和」と「アニメ」にともに関連したこの曲が選ばれたのだろうと思う。実はこの時点ではももクロ単独パートはあるはずだと思ってはいたけれども半分以上満足したようなももクロ=ヒダノコラボだった。
 一方、正規のももクロライブブロックはこの日は明らかに海外の視聴者を意識したものだった。overtureの後、最初の曲はKISSとのコラボ曲である「夢の浮世に咲いてみな」*1をやった後は「Believe」(ガンダム)、「『Z』の誓い」(ドラゴンボール)とアニメ曲を連発。直後のMCでは海外ツアーを実際にやってみた印象では「やはり海外公演で盛り上がるのは向こうの人も知っているアニメ曲。それで今回はそういう分かりやすいセットリストとなりました」と説明。今回のライブがアニメ曲縛りであることを明かしたうえで、「そしてそれなら私たちにはあの曲もあります」(夏菜子)と話して「MOON PRIDE」「月虹」と「セーラームーンCrystal」のももクロオリジナル曲を披露した。
 その後、海外公演をやりたいのでそのためには英語力を上げないといけないなどと豊富を語ったものの、れにちゃんが「寝るとすべて忘れてしまう」などと言い出しぐだぐだの展開に。海外向け番組へのリップサービスもあるとは思うが、思ってもないことは言わないのがももクロ。それでもここでこういう風に言い出したということは国内の青春ツアーが一段落する来年以降にはより規模を拡大したワールドツアーも検討しているのかもしれない*2。、
 最後は唯一の最近の楽曲である「Blast!」とやはりアニメ「モーレツ宇宙海賊」の主題歌である 「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」でしめた。
 曲のつながりからいえば最後の曲はニューヨークヤンキースの田中将投手の今期の登場曲である「いつだって挑戦者」でもよかったかなと思ったが、NHKワールドの放送圏は米国だけじゃないのと、アニメ縛りを最後まで貫こうと考えたセットリストだったのかなと思えたのである。
  それにしてもこのライブを見て最初に思ったのは最近のももクロのパフォーマンスの安定性と歌唱力の向上ぶりだ。この日もMay JやFLOWの歌を聴いたときにはさすがにうまいなと思ったのも確かだが、歌いなれた自分たちの曲に関していえばそれほどの遜色はないとも思われてきた。特に「BLAST!」などは相当な難曲であると思われるのにこともなげに歌いこなしている。ラップやフェイク、ユニゾン、ソロ歌唱と様々な方向性の曲がこの1曲の中に盛り込まれており、それを全部こういう風に歌いこなせるグループは他にもいるのかもしれないけれど私には思い浮かべることはできない*3

 【出演者】
ヒダノ修一 スーパー太鼓セッション/FLOW/ももいろクローバーZ
 Guest:May J. (J-MELO MC)

 

セットリスト(ももクロ関連)
◇w/ ヒダノ修一スーパーセッション
GOUNN
MC
ニッポン笑顔百景
MC
 *
overture
夢の浮世に咲いてみな
Believe
『Z』の誓い
MC自己紹介
MOON PRIDE
月虹
MC
BLAST!
猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
MC

 

 

*1:これもMVを見れば分かるように振り付けに相撲の四股を取り入れたり、和の風味が入っている曲でもある

*2:2020年までになんとか海外の知名度を上げたらという話があるが、むしろ2020年に何らかの形で海外向けに名を売ることができたら、その勢いを買ってという方向性のような気がする。いずれにせよ現時点の海外での知名度ポール・マッカートニーエルトン・ジョンと比較したら日本のどのグループもないのも同然なのであまり意味はないのではないか

*3:普通に歌がうまいとされているアイドルやダンス&ボーカルグループでもこの分厚さで歌唱を再現するのは難しいと思わせるところがある