大塚英志『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』@講談社現代新書
大塚英志『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』(講談社現代新書)ISBN:4061497030。
著者である大塚英志は1958年生まれで私とまったく同年代なので、その著者の80年代回顧については「それものすごく分かる」*1というところがある半面、まったくピンとこないところもあった。これは学生時代であったりした当時の興味の方向性が著者と私では全然違っていたということもある*2が、東京と関西の違いというのはそれ以上に大きかったかもしれない。それでも、こういう風に整理されていたもので思い返してみると新人類と「おたく」の関係なども分かって面白い。この著者の観点からいえば私などはどちらにも入らないわけだ。ただ、80年代ということであれば昭和59年に就職して東京(正確にいえば当時住んでいたのは川崎)に出てきているので、その当時の東京の雰囲気を全然知らないわけではない。しかし、京都と東京ではいま以上に周囲の雰囲気というのは違っていたような気がする。
著者はここで中森明夫などを持ち出して、「おたく」を差別することで、自らを新人類として存立するような性向があったという趣旨のことを書いていて、それには納得できるところもあるのだが、実は「おたく」というか「おたく」的なものには「おたく」以外からの差別というよりも、世間一般から見たら「おたく」と同じように見えても、「私はあいつらとは違う」という、ある種同族間の差別のようなものの方が激しくあったような気がしてならないのだが、これはどうなんだろう。