チェルフィッチュ「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」@アートコンプレックス1928
作・演出:岡田利規/舞台監督・音響:大久保歩/照明:大平智己/制作:プリコグ
出演
山縣太一、安藤真理、伊東沙保、南波圭、武田力、横尾文恵
共同製作:HAU劇場/助成:公益財団法人セゾン文化財団/提携:ART COMPLEX 1928/協力:急な坂スタジオ/主催:KYOTO EXPERIMENT
「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」は演劇批評サイトwonderlandに初演時(ラフォーレ原宿)の長編レビュー*1を書いており、そこにほぼ尽くされているのだが、ただ、京都のバージョンはパフォーマーそれぞれの動きなどがより一層デフォルメを加えて、ダンス的な要素が強くなった印象を受けた。照明などを含めてかなり雰囲気が違って感じたので、「演出や照明などに変更を加えたか」と終演後、岡田利規本人に直接問いただしてみたのだが、答えは「変えた部分はほとんどない」とのことで、「これはいったいどうしたことだろう」と戸惑いながら考えているところなのだ。
印象が大きく変化した理由のひとつとして挙げられるかもしれないと思ったのは観劇した劇場内での場所の違いである。実は前回は舞台の下手側のかなり後方側の客席から見たのだけれど、今回は最前列の桟敷席から見た。もちろんそれだけだとそれほどの違いがあるように思われないけれども、この舞台がこれまで見たチェルフィッチュの舞台と異なることのひとつにパフォーマーのセリフを全員分マイクで拾ってそれを舞台左右に設置された大型のスピーカーから流しているということがある。実はこれは初演の時からそうで変わってないということのようなのだが、前回の公演の記憶であまりそういう記憶がない。それはひょっとすると見ていたのが舞台後方でその位置からだと役者がリアルタイムで話しているセリフがリアルタイムでマイクに拾われてスピーカーから聞こえてくるというのがそれほど違和感のない位置だったからかもしれない。
この日のような最前列から見ると正面の割合近接した位置に役者たちがいて、演技をしているのに対して、拾われたセリフは左右のスピーカーから聞こえ、そして、この舞台では3つの場面でそれぞれ3種類の音楽を使っているのだが、セリフがその音楽と一緒に録音された声のように左右のマイクから聴こえてくるというこの感覚がどうやら少しだけ前に舞台後方から見た時よりも、セリフと動きの独立性の印象を強めていた。そういうことがあったかもしれないと思った。
*1: 「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」レビューhttp://www.wonderlands.jp/archives/12658/