ももクロ一座特別公演@明治座(ネタバレレビュー)
ももクロ一座特別公演@明治座(ネタバレレビュー)
佐々木彩夏 初座長決定!
笑いあり、涙ありの大江戸娯楽活劇と、ヒット曲満載で贈る歌謡ショーの豪華2 本立て!
作:鈴木聡
演出:本広克行
主演:佐々木彩夏
出演:ももいろクローバーZ(百田夏菜子 玉井詩織 高城れに)
オラキオ 国広富之 松崎しげる ほか
第一部 座長・佐々木彩夏
<b> 大江戸娯楽活劇 『姫はくノ一』</b>
第二部
<b>『ももいろクローバーZ 大いに歌う』(仮)</b>
本広克行監督とももいろクローバーZによる3本目の舞台作品。平田オリザ作による現代口語演劇からももクロ楽曲を使ってのジュースボックスミュージカルと続いて、今回は明治座での座長芝居というこれまでとは全く異なるフォーマットに落とし込みどんな舞台を見せてくれるのかが、今回の注目であった。
私はももクロのことを音楽や演劇、バラエティーなどのジャンルを横断するような総合エンターテインメントプロジェクトと考えている。その中のひとつのジャンルが演劇なのだが、それゆえその活動の中核が音楽ライブであることは外せないとしてもこれもその本質をなす重要な要素だと考える。そのことはかつて論考としても書いた*1ことがある。
その中でいくつかももクロに今後実現してほしいことを挙げていたが、実はそれは現在でも道半ばと思っている。
ただ、実は論考の中で書いたことでかなり理想に近い形で実現していることもあり、音楽劇の要素を色濃く取りいれたライブであるシネマ倶楽部での「THE DIAMOND FOUR」公演*2がそのひとつだった。
それ以外にいつか実現してほしいのは今回も脚本を担当する鈴木聡が脚本を手掛けたミュージカル「阿 OKUNI 国」の上演で、前回のミュージカル「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」は日本屈指のオリジナルミュージカルである「阿 OKUNI 国」にはまだ遠く及ばないものではあるが、鈴木が絡んでいることもあり、そこに向けての第一歩を記したものと感じた。
もうひとつの目標と考えているのは劇団新感線が松竹と提携して上演している「アテルイ」のような作品である。これも現時点ではいろんな意味で手が届かない感じではあるが、今回、鈴木・本広コンビがどの程度、単なる商業演劇のいわゆる座長芝居に収まりきらないものを見せてくれるかで、大型歴史劇のようなものに向けての今後の試金石につながるかと注目しているのだ。なお、以前の論考の中では新感線とのコラボにおいておポンチ路線の音楽劇のようなものを思い描いていたのだが、今回の明治座公演でそれに近いようなものはすでに実現しているはずなので、今後手掛けるなら「いのうえ歌舞伎」+ももクロのような本格的な公演であろう。
さて、実際の明治座の舞台はどうだっただろうか。笑いあり、涙ありのお江戸娯楽活劇の宣伝文句の通りの舞台で、これはももクロ版のドリフターズという感じだろうか。これまでももクロが手掛けた演劇作品というよりは「子供祭り」の延長線上にあって、ただ、アクション、舞台の仕掛け、歌謡ショーの内容など入っている各要素は大幅にグレードアップされている。それ自体はももクロは以前からSMAP、嵐、ドリフターズのようなグループを目指すと以前から公言していたから、ももクロとしての王道であろう。
見せ場のひとつはももクロがくノ一に扮しての殺陣の場面で殺陣の経験はこれまでほとんどなかったもののダンスの経験を武器に奮闘、連日の猛練習でかなり見映えのするものに仕立てあげた。あーりんはともかく、夏菜子と詩織は身体の切れも鋭く相当なものだと思った。先に挙げた劇団☆新感線的な舞台にせよ、ミュージカル的なものにせよ、ももクロがこれまであまり経験して来なかったことのなかでいつか必要になるのはアクションであるから、今回入門編のような形でそれに取り組むことができたのは凄く良かったと思う。
第二部の「ももいろクローバーZ 大いに歌う」はライブではあるのだが、今回は最初の2曲はももクロの和の要素の強い楽曲を選び、佐々木彩夏は着物姿で登場。「夢の浮き世に咲いてみな」では第一部に登場した殺陣の担当のアクション俳優が殺陣の演舞を披露するのに合わせて、ももクロが歌うなど第一部と第二部を自然につなぐような演出が導入された。
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第二部セットリスト
ニッポン笑顔百景
夢の浮き世に咲いてみな
ももクロの令和ニッポン万歳!
笑ー笑
LADY MAY
灰とダイヤモンド
アンコール
THE ROAD SHOW
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もうひとつの特徴は回り舞台などの劇場機構を積極的に活用、普段のライブ会場では難しい照明効果の多用などショーアップされたライブとなっていたこと。そういうなかで歌った「LADY MAY」「灰とダイヤモンド」はいつも以上にももクロのショーとしての完成度の高さを見せ付けるものとなった。その一方で第一部で登場した俳優たちがバックダンサーとして一緒に踊るなど親密さを強調した演出もあり、座長芝居としてのももクロのリーダーシップを感じさせるものとなっていた。
総じて明治座の商業演劇(座長芝居)というフォーマットの中ではハイクオリティーのものを提供したと思う。
その上で今後はそれを越えたような演劇としての芸術的価値の高い舞台にも挑戦してもらいたいというのも終了後には感じた。鈴木聡、本広克行という組み合せは娯楽エンタメというカテゴリーでは最高のものを提供できることを証明したし、そういうものもまた見たくはあるけれど、一度タイプの異なる演出家との舞台も見てみたい。劇団☆新感線のいのうえひでのりはこれまでも書いてきたが、実現の可能性を考えずにフリーハンドで書いていけば例えば小池修一郎演出+宝塚OGでミュージカルとか堂本光一演出の舞台とか。松竹と真正面から組んで、ももクロ歌舞伎とかも見たい。その場合演出家はやはり猿之助を望んでいるのだが、無理そうならば獅童でもいい(笑)。