ももクロ&アイドル blog (by中西理)

ももいろクローバーZとアイドルを考えるブログ

ABEMA PPV ONLINE LIVE ももいろクローバーZ「PLAY!」

ABEMA PPV ONLINE LIVE ももいろクローバーZ「PLAY!」

ももいろクローバーZの生配信ライブ。ももクロはこれまでも配信ライブの新たな可能性について挑戦的な試みを続けてきた*1が、これまでの試みを踏まえての決定版ともいえるライブ配信だったのではないかと思う。VR技術を駆使した新曲の「PLAY!」の初披露から始まった。今回の配信ライブが凄かったのはPerfumeの配信ライブなどのVRなど最新のデジタル技術を活用した場面をまず最初に提示しながら、デジタル技術だけに頼らないでシーンごとに様々な映像に関するアイデアを盛り込んでいっていることだ。
特に面白かったのはデジタル技術を駆使した米国流SFXではなくて日本伝統の特撮を連想させる街のミニチュアを使った「ゴリラパンチ」。明らかにハリウッド版「ゴジラVSコング」のことを意識したものであろうが、日本流の特撮はハリウッド的なデジタル技術を駆使したSFXへのアンチテーゼ的な意味合いもあるかもしれない。もちろん、これはパロディーなのでスカイツリーを持ち上げて掲げるあーりんゴリラの姿には思わず笑ってしまうのであるが。
「チャイマゼロ!」も印象的だった。パフォーマンスフロアが動いていく演出にジャミロクアイ*2の名前がコメント欄に上がっていたが、川上アキラ氏も応じていたから明らかにこれはそれを元ネタに意識していただけではなく、全体としてこれまでのMVや映像の歴史をなぞっていこうという意図さえ見えてくる。
ライブ全体が映像手法の実験室というか、映像クリエイターらの遊び場のようになっている*3パフォーマーとしてそれにリアルタイムで対応していくことは演者の側にも様々な手腕が要求され、簡単なことではないが、事前収録ではなく、ほぼリアルタイム、編集なしでそれに対応していくということはももクロのパフォーマンス力があればこそ可能だったことであろう。
この配信は表現の方向性の多様性が特徴だが、それを可能にしているのはこれまでMV撮影などでももクロにかかわってきた4組の映像クリエイターのチームが参加して、場面ごとに競うあうようにアイデアを出していることだ。ライゾマティクスリサーチ(真鍋大渡)が制作したPerfumeの配信ライブは確かに素晴らしくはあったけれど、優れた映像クリエイターにはそれぞれ個性があるために単一の手法を使ったものを何本か続けてみると最初は新鮮でも次第に既視感が出てきてしまうということはどうしてもある。
複数のクリエイター起用にはそれを避ける狙いがあるが、一方でそれぞれ方向性の違うクリエイターがかかわることで全体の印象が散漫になってしまいかねないリスクもあるわけだ。おそらく、そうならないように総合演出的な役割を担ってい人物が誰かいるとは思ってはいるのだが、そうはならない最大の要因はももクロの強い個性と高いパフォーマンス力ではないかと思う。
これはももクロと楽曲を提供する音楽家の関係性に近いかもしれない。初期のももクロの主要楽曲提供者はヒャダインだったが、ヒャダインももクロの音楽プロデューサーではない。ももクロにはPerfume中田ヤスタカに当たるような楽曲提供者はいない。それゆえ、楽曲自体の方向性は曲ごとに千変万化ともいえるのだがそれでもそれがももクロの楽曲という風に聴こえるのはそれを「ももクロの世界」に変容させてしまうパフォーマンス力と個性がこのグループにはあるからだ。だからこそももクロは気鋭の音楽クリエイターがそこで様々な試みを実行するプラットフォームになっているのだ。
今回の配信に参加した映像クリエイターとももクロにも似たような関係性が成立しているのではないか。ライブは終了したが、具体的に誰がどのシーンを担当したのかはまだ完全には明らかではない。このライブに関しては遅れてでもかまわないから裏側の具体的事情もぜひ知りたい。
追伸)
公式の発表はないが参加した映像ディレクターのひとりである河谷英夫がディレクター4人の写真をアップしていた。河谷は佐々木彩夏が総合演出したたこやきレインボー生配信ライブSHOW「真夏のホームパーティー・ザ・ワールド」*4の映像ディレクションを手掛けた映像アーティストである。彼が4人の中に入っていることは推定してはいたが、これで確定したようだ。

さらに追加情報)
その後判明したのは参加映像ディレクターは次の4人。
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多田卓也=境界のペンデュラム、クローバーとダイヤモンド

河谷英夫=サンタさん、Chaimaxx、Dの純情、笑一笑

スミス=あんた飛ばしすぎ‼︎

ZUMI=stay gold
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ももクロの最大の武器は多様な才能を受け入れるプラットフォームとしてのフレキシビリティー(柔軟性)の豊かさだろうと思う。楽曲に関しては以前、特定の音楽プロデューサーがいないので、誰の楽曲でも受け入れ可能で極端なことをいえば実現の可能性はともかく、ブライアン・メイポール・マッカートニーに楽曲提供を依頼することも可能と指摘したことがある。実際にはそれはなかったが、KISSとのコラボは実現したし、この日披露した楽曲では「ゲッダーン」は英国のバンドOK GOの提供曲だ。OK GOもMVにこだわりを持っていて、自らのMVには凝りに凝った演出*5を導入している。ひさびさにこの曲をやったことにはそういう意味合いもあったのかもしれない。

以下、参考のためにそれぞれの映像担当ディレクターのMVを上げておく。
多田卓也
<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/riPW20UtvBY"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=riPW20UtvBY">佐々木彩夏「Girls Meeting」Music Video</a>
<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/ohVtpeVlwZs"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=ohVtpeVlwZs">『MOMOIRO CLOVER Z』SHOW at 東京キネマ倶楽部_映像発売記念! 演出家「多田卓也」×振付師「avecoo」×出演者「DragQueen」コメンタリー生配信</a>
河谷英夫
<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/5degcfbioz4"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=5degcfbioz4">【ももクロMV】PUSH / ももいろクローバーZ(MOMOIRO CLOVER Z/PUSH)</a>
<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/Wfryk_WTuZE"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=Wfryk_WTuZE">TACOYAKI RAINBOW / “MANATSU no HOME PARTY the WORLD” Live Digest and Making</a>
スミス
<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/_WJ072_N12Y"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=_WJ072_N12Y">【ももクロMV】ももいろクローバーZ『あんた飛ばしすぎ!!』Music Video</a>

ZUMI
ZUMI氏は今回「マホロバケーション」「stay gold」「月と銀紙飛行船」「イマジネーション」を担当したようだ。
<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/avC2wqz2T4g"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=avC2wqz2T4g">【Momoclo MV】ももいろクローバーZ「stay gold」Music Video</a>
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<b>ももいろクローバーZ
ABEMA PPV ONLINE LIVE『PLAY!』セトリ</b>

PLAY!(新曲)
TDF
マホロバケーション
ゲッダーン
MC自己紹介
チャイマゼロ(staygold)投票
ゴリパン
DNA(でたらめ)投票
MC
あん飛ば
デコレ
MC
ニッポン万歳
笑一笑
MCジャッキーちゃん
月色Chainon
銀紙飛行船(イマジネ)投票
クロダイ
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2020年11月29日(日) 19:00配信開始
ももクロ史上初の“視聴者参加型”配信ライブ!
ABEMA独占生配信決定!
たとえ物理的な距離があっても、“一人で”も“自宅で”も最大限に楽しめる
イベントを目指します!
合言葉は「ももクロとPLAY!」
“ボーダーレス”な映像体験をお届け!
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*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/4JkIs37a2JE"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=4JkIs37a2JE">Jamiroquai - Virtual Insanity (Official Video)</a>

*3:「PLAY!」という表題にはそういう意味も込められているのかもしれない。

*4:simokitazawa.hatenablog.com

*5:
<iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/LWGJA9i18Co"></iframe><br><a href="https://youtube.com/watch?v=LWGJA9i18Co">OK Go - Upside Down &amp; Inside Out</a>